男の娘になりたくて 9

俺を助けてくれたイケメンなヒーローは、どうやら変態…もとい。
アダルトグッズの店長兼オーナーだったらしい。
俺が言葉もなく固まっている横を、

「店長、お先に失礼します」
「ああ。お疲れ様」

スタッフらしきお兄さんがヒーローに挨拶をして通り過ぎて行く。

「それさ、そのままじゃ辛くない?」
「―――!!」

そう聞かれて、ようやく自分がイク寸前だったことを思い出した。

「え、や、そのお構いなく!」
「君の目の前にあんの、全部試供品なんだよね」
「ええっ、そうなんですか!?」
「そこのオナホとローターを組み合わせて使ってもいいし、アナルに興味あるならそっちのエネマもお勧めだよ」

いやっ、正直に言うとアナルにも興味はあるけど、エネマグラだっけ?
その使い方はよくわからない。

「なんならその辺のDVDも観ていいけど、そんだけ勃起してるなら必要はないかな」
「あ、はは、そうですね」

他にもそっちのアナルパールやアナルバイブ、張り型も使っていいしと、何故だかアナルグッズを強く勧められた。

けど、パールやバイブは痛そうだし、やっぱエネマが……。

そう考えて思わず頭を振った俺の耳元で、

「…興味があるなら教えるよ?」
「!!!」

ヒーロー改め悪魔の囁きが聞こえる。

「や、け、け、結構です!」
「遠慮しなくていいのに」
「あ、いや!遠慮なんかじゃなく!」
「そう?気持ちいいよ?」
「え、え、あ!じゃあこれ、これお借りします!実はこれも使ったことないんで」

後ろ髪を引かれながらも慌ててオナホを片手に立ち上がると、ヒーローに腕を強く引かれた。

「な、なんですか」
「それの使い方わかる?」
「え、えーと、ここかな?ここに突っ込めばいいんでしょ?」

そう言うと、案外あっさり手は離された。
その手に、何やら透明なゼリーのような物が入った小分けパックを一つ握らされる。

「えと、これは?」
「ローション」
「え!?」
「それを挿入口から入れて使うんだ。因みに発売時には一回分ずつ小分けにされたそれが十回分付いてくる」
「そ、そうなんですか」

なんかセールストークのようなものを聞かされてしまった気もするけど、これ、無料(ただ)で借りてもいいんだよね?

「じゃ、じゃあお借りします。あの、トイレは……」
「あっち」

ヒーロー改め悪魔の魔の手から逃れるように、俺は慌ててトイレに駆け込んだ。

Bkm
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