はじまりの予感 4

「あっ、いいよっ。そ、そこっ」

家を出て上京した俺が真っ先に向かったのはとても有名なハッテン場で、先ずはそこを拠点に売りをして生計を立てていた。
売りと言っても年齢的には援交で、その日暮らしの生活費と寝る場所をそれで補っていた。

母親はレイプ犯の息子でもある俺の出生届けを出してくれて中学校まで通ったが、住民票はそのままでこっちに来たから、俺は単なる家出人と言うことになるのだろう。

めでたく18歳になってちゃんとした職を探す時に、住民票やら何やらの書類をどうにかしようと思う。
職と言っても風俗や水商売以外出来そうにないし、もうあの街にも戻りたくもないけど、あの頃の自分と決別するためにもちゃんとしないと。

「…アアッ!」

それにしても、カイトは始終無言だった。
無口にしても程がある。
なのに俺を見詰める瞳はとても真剣で、何かを確かめるように丁寧に丁寧に俺を抱く。

「…はあっ、も、いいよ。後は俺がするか、らぁ」

客である相手にこんな扱いを受けたことは初めての経験で、正直、嬉しいと言うよりは戸惑っていた。
客の中に俺を恋人にしたがる男もいるけど、その男にもこんな扱いを受けたことはない。

恋もしたことがないし、恋人自体いたことがないけど、恋人同士のセックスはきっとこんな感じなんだろう。

カイトは散々舌と指で俺のアナルを嬲り、ようやく俺の尻から顔を離した。
その隙にカイトのペニスにコンドームを装着しようと身を起こすと、

「…え」

いつの間に着けたのか、カイトのそれには既にベッドサイドに置いておいたコンドームがしっかり装着されていた。
ずっと俺のアナルを弄っていたのに、いつ装着する隙(ひま)があったんだろう。

あまりに隙をついた行動に呆然としていると、

「おいで」

すっかり準備が調ったカイトから呼ばれた。

「…あ」

行為中に初めて発せられたカイトの発言は不意を打つもので、何故だか胸がときめいた。

この甘い雰囲気も俺を呼ぶ声も、まるで恋人同士のそれみたいだ。
初めて経験する甘い時間に戸惑いながらも、俺はカイトに身を任せたのだった。


Bkm
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