ゲイビ上等! 4

車で走ること数時間。
俺達は先輩が済む場所へと無事到着。
よくよく考えてみれば、先輩ってば元々は極道な坊ちゃんだった。

「なにこれ…」

早く入れと先輩に促されたのは都心にある高級マンションの最上階で、とても俺みたいな一般庶民が一暮らせる物件じゃない。

「オジャマシマス…」

緊張のあまり、何故か棒読みになりながら無駄に広い玄関先で靴を脱ぐ。

「あ、あのぉ…」
「ん?どうかしたか?」

汚い足で上がり込むのが気が引けて、思わずスリッパを探してしまった。

「広っ!」

これまた無駄に長い廊下を抜けると目の前には無駄に広いリビングが広がっている。
これってば、20畳ぐらいあるんじゃねえの?
あまりに広すぎて、およその広さもわからない。

凌先輩は極道の家に生まれたが、先輩が中坊の頃に親父さんが脱極(道)して俳優業を始め、それが大当りをして現在に至っている。
日本を飛び出してアメリカで活躍中の親父さんは、ジャパニーズヤクザ役の映画が大当りしてハリウッド俳優の仲間入りを果たしたのだ。

極道時代にもそれなりの資産や収入があったみたいだけど、親父さんが俳優を始めたことで一気にそれが膨れ上がった。
その頃から遊び始めた先輩は、男女見境なく食いまくって現在に至っている。

「適当に座って」
「あ、はい」

と言われても、先輩は一人暮らしのはずなのに、ソファーの数(ついでにクッションの数も)が尋常じゃないんですけども。
どれに座ろうか散々迷って、結局は先輩の斜向かいに座った。

「………」
「え、えっと凌先輩?」

適当に座ってって言ったくせに、凌先輩は俺の手を引いて俺を先輩の隣に座らせる。

「な、なんで隣……」
「つか、ビデオ観たくない?」
「!!」
「コタがこれからするのとはちょっと違うけど、コタが好きな方のやつ」

き、来たーーっっ!
念願のエロビだぁーーっっ!

「え、え。もしかして先輩が出演したやつ?!」
「そ」
「うそっ、マジで?!観る観る!」

別に我慢していたわけでもないけど、なんとなく恥ずかしくて観られなかった。
よく知る人が男優のエロビって、身内がやってるセックスを見るようなものだから。

『アーーッ!アッアッ!いいのぉーっ!おまんこいいっ!』
「―――!!」

ぎゃーっ!
初っ端からやってるし!
しかも無修正!!

『これからするのとはちょっと違うけど、コタが好きな方のやつ』

この時の俺は、先輩が言った言葉の意味に気付けなかった。


Bkm
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