ゲイビ上等! 3

気のせいか、二人の間に火花が散ってるのが見えるんですけど。
てか、龍牙は本当に心配性だ。
俺と先輩に限って何かあるはずがないじゃんか。

「そんじゃ、行くか」
「はい。龍牙、またな。お盆には帰るよ」
「ああ、体には気をつけろよな。あとは家主にも」

校門まで出てみると、まだちらほら人影があった。
こちらを気にしてる奴がいないでもないが、先輩と一緒の俺に手出しは出来ないはずだ。

校門脇に停めてあった先輩の車は相変わらずのシャコタンで、潔いまでのヤン車だった。
そう言えば、何回かこの車で拉致られたことを思い出す。

「コタはこっち」

あん時は結束バンドで縛られて後部座席に転がされたけど、先輩は自分が乗り込む前に助手席のドアを開けてくれた。
俺が助手席に乗り込むのを見届けてから自分は運転席に座り、周りの好奇の視線を横目にエンジンをかける。
それから、

「…やっぱ迎えに来て正解だったな」

そう独りごちて車を発進させた。


確かに校門前には見知った顔がいくつかあった。
OBや他校生も含め、過去にタイマンを張った野郎が大半だ。
もしかして、何人かは俺への御礼参りのために張り込んでいたのかと思うと冷や汗が出る。

「迎えに来てくれてありがとうございました。もしかしたら俺、今頃、ボコボコにされてたかも知んない」
「ボコボコにされるだけならまだいいんだけどな」

微妙に会話が噛み合わないでもない先輩はそう言って溜息をつき、俺の頭をぐしゃっと撫でた。
母校になったばかりの学校が小さくなるのを目で追いながら、なんとなくセンチメンタルな気分に襲われる。

「…思い返せばいろいろあったけど、結構楽しかったな」
「ふっ、これからはもっと楽しいことが待ってるよ」

県道をひた走りながら先輩と交わしたこの会話を俺は一生忘れないだろうと思った。
不安がないと言ったら嘘になるけど、今はまだワクワクする気持ちの方が強い。

東京での新生活に想いを馳せながら、この日、俺はおバカ高校を卒業したのだった。


Bkm
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