世界は未完のまま終わる | ナノ


Long novel


 世界は未完のまま終わる
 ―想いに終わりなんて、ない。
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07


「そうだ、アタシもダンテ王子に報告があったのよ」
「……馬鹿にしてんのか?」
「違うわよ、天界のことよ」
「天界?」
この話の流れじゃ、からかってんのか真面目に言ってんのかいまいち判断が付きにくいって。でも天界の話なんてそう簡単にしないか。
「トレアがなんか言ってきてるのか?」
リヴェランスを支えて座るプリムに目線を合わせるために、再びその近くにしゃがむ。
 リウスは父さんの意向で、天界との繋がりを大事にしていて、天界の街の一つのトレアと同盟を結んでいる。他の街から見ると珍しい光景だとも言われる。逐一トレアと情報を交換し合っていて、その通信役を担っているのが俺とプリムだ。当初は交代で行ってたけど、今はプリムに任せっきりになってる。俺の幼馴染みという事で、リヴェランスを始めに城の多くの人間のプリムへの信頼は厚い。
 俺と目を合わせてプリムが先を続ける。
「その逆よ。毎日来てた定期通信が、昨日から途絶えてるのよ。こっちから送ってみても一つも反応が返って来ないわ」
今まではこんな事なかった、と難しい表情を浮かべる。
「そいつは妙だな……エル坊が無断で連絡を切るとは思えない」
天界で何かあったのか……?トレアに住む小さな大天使の姿を思い浮かべる。
「リウスに戻り次第、アリアの現状と共に王に報告なされては如何ですか?」
リヴェランスが進言してくれる。
「……そうだな。俺もそう考えてた。場合によっちゃトレアの様子を見に行かなきゃな」
今の魔界みたいに魔物が狂暴化してたらまずい。考えたくはないけど……

「では、早めに我々もリウスへ撤退しましょう」
リヴェランスがゆっくりと体を動かす。まだ傷が痛むのか、時折顔を顰める。プリムも彼を支えて立ち上がる。
「大丈夫?」
「はい。お気遣いありがとうございます」
その様子を一瞥し、廃坑の出口へ足を向けた。
「よし、早くリウスに戻ろうぜ」
足早に廃坑を出て行く俺に、プリムが声をあげる。
「ちょっとダンテ、リヴェランスさんは怪我してるんだからもう少しゆっくり!」
「お前達はゆっくり来てもいいからな!」
「……急に何なのよ、もう……!」
「プリム様、私は構いませんよ。ゆっくり、且つ急ぎましょう」
悪態をつくプリムの声とリヴェランスの穏やかな声が背中越しに聞こえた。

 ……何だか胸騒ぎがするんだ。何とも形容しがたい不安が襲ってくる。
早く。早く城に戻らなくては。父さんにトレアの事を伝えなくては。

自分で思うよりも早く、足はどんどん前に進んでいた。

Section 05. End.





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