世界は未完のまま終わる | ナノ


Long novel


 世界は未完のまま終わる
 ―想いに終わりなんて、ない。
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01


 ここは国立アルフィラツ魔法学校。人間界の魔法都市として栄える王国、ベテルギルウスにある世界最大の魔法学校である。優秀な魔法使いを目指す者や、自身の魔力を高めたい者達が通う。魔法学校故に、魔力の無い者は入学出来ない。
 このアルフィラツ魔法学校をはじめとする各地に建立している魔法学校では、基礎授業、並びに世界や魔法の起源など、一般の学校と同様に学術知識を学ぶ。その他に魔力や精神を鍛える授業や、実際に魔物と戦う実技授業が加わる。
 年齢制限は無く、一定の魔力があれば入学出来る。その際、年齢や魔力毎にクラス分けされ、それぞれ制服の形状が若干異なる。個人差はあるが、3年間の勉強で一通りの知識と魔力を養うことが出来るが、期間の修了後もさらに自身の魔力を磨きたい者はそのまま期間を延長することも可能。
 世界最大の魔法学校なので、遠くの国から学びに来る者も多く、そんな彼らの為に学校の近隣に規定の寮がある。そこに住みながら魔法を学ぶことが出来る。校内は食堂や売店などの設備も充実しており、食堂から屋外テラスへと抜けられる。中庭には数脚のベンチや涼しげな噴水があり、生徒達の憩いの場となっている。
 また、学校の敷地内にはベテルギルウスを治めるマーシェル家が管理している区域がある。強力な結界が張られている為、一般の生徒は立ち入ることが出来なくなっている。

 その校舎の一室で授業が行われている。深い海を連想させる青い髪の男が、20人程の生徒の前で教鞭を執っている。一見すると短髪に見えるが、後ろ髪だけが肩甲骨の辺りまで伸びている。グレーのスーツを着ているがネクタイを締めておらず、黒いYシャツの首元は第2ボタンまで開けられている。男の穏やかで気怠げな低い声が静かな教室内に響く。
 やや丸みを帯びた三角のフレームの眼鏡を掛けている。その奥の切れ長の漆黒の瞳は、左手に持っていた教科書を見ていたが、本文を読みながらも視線を上げて生徒達の顔を順繰り見やる。
「−―このような経緯で、この世界は人間界、天界、魔界に分かれたと言われている。そして−―」

キーンコーンカーンコーン♪

定刻を告げるチャイムの音に男の声が途切れる。ややあって、教科書をパタンと閉じる。
「……じゃあ今日はここまで。次の章予習しとくように」
「起立、礼」
号令がかけられ、生徒達は一斉に立ち上がり礼をする。男は礼を返して退室していく。





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