運ばれてみた「仁王先輩、まだ着かないんスか〜?」 「もうすぐぜよ。ほーら。」 「あれが…」 人も車も殆ど見当たらない道を歩くこと数時間、果てしない石段を登ること数分、漸く目的地に辿り着いた。大御神神社と書かれた石碑は古く味があり、そびえ立つ鳥居は鮮やかに存在を主張している。 「さっきから人が見当たらないね。」 「パワースポットだから賑わってると思ったんスけど。」 「おかしいの…」 「人払いしてるからな。」 「「「!」」」 急に聞こえた声に振り返ると、和服に身を包んだ青年が立っていた。 「あんた…誰?」 「俺はここの神主。お前らが来んのは分かってたぜ。神々が教えてくれたからな。」 「えっ!」 「か、神!?」 「…お前さん、何者なんじゃ?」 驚く俺達を余所に、金の髪の青年はほんの少し笑って、 「ただの死がないじじいだ。愛しの空ちゃんの。」 * * * 『んにゃ…』 んー、と縮んだ筋肉を伸ばす。今更気付いたが、そこは社(やしろ)の中ではなく鎮守の森だった。いつの間に? 『この御神木…懐かしいっすねー。』 《お帰り、神殿守(かむとのもり)よ。》 『あ、稲荷様ー。』 眩しいくらいに輝く毛を靡かせている神々しい狐に、お久しぶりですー、と言うと立派な9本の尾をゆらゆらと揺らした。 《私がお前を運んだのだ。此処が最も聖気が強いから。》 『マジっすかー。お気遣い感謝しますー。』 《また随分と無茶をしたのだな。暫く帰さんぞ。》 『…ワーオ。』 --------------------------- 《もそっと危機感を持つべきであろう。死してしまうのだぞ?》 『うー、反省してるっす。』 《私を呼ぶことも無かったではないか。神殿守の特権だ、好きなだけ神を召喚するが良い。》 『…あいあいさー。』 |