想像力
これはたいしたことがないので誰にも話してない話。
というよりも話せば必ず相手の頭には"妄想癖だ"と浮かび気持ち悪い女だと思われるか"痛い子"あるいは"オタク思考""被害妄想をする病んでる女"と思われるわけで話さない。
だからこの話はただの"妄想"話だということを前提とした話としよう。
最後まで読んで馬鹿らしい妄想癖のついた女だ、と笑ってやって欲しい。
ホラーやオカルトにはまれば怖いながらも掲示板や体験談、小説のように奇怪なことが起こればいいと思う。だが実際それが起こったら、と考えるとやはり起こって欲しくないと思うそんな中途半端な気持ち。
それはいつのまにか"想像"で補われるようになった。
体験上の例をあげれば、部屋の窓に何かがコン、コン、とぶつかる音。別に窓はあけてはいないが隙間風が器用にアコーディオンカーテンを動かし鳴らしているのだろう。
けれどもつかさはそれをわかっていながらも頭に"想像"という世界が生まれてその中に同じ動作をしている自分がいて音を鳴らしている窓があるのだ。
ただ違うところといえば窓のアコーディオンカーテンの間から男性の暗く何かを言いたそうな顔がこちらを覗き見ていることだ。きっと気付いて欲しいのだろう。人差し指の関節で窓ガラスをコンコンと叩くのだ。
こちらは聞こえないから振り返らない。それでも気付いて欲しくて叩く。そして次第に彼の後ろに同じように気付いて欲しいと思う女が足を止めて窓に両手をつけてキョロリと視るのだ。似たようなことが何度も起きて最後には強化ガラスの先にいる動物を見たいが為に集る人間のように何人もの人間が覗き見ている。
頭が締め付けられるような鈍い痛みを感じて"想像"は強制終了される。
他にも、仕事が終わり家へと入るため玄関を開けようとすると車の中に誰かが座ってこっちを視ている想像、中に入ると目の前、玄関の空間一杯に巨大な幼稚園生ぐらいの真っ青な幼い顔、頭だけが埋まっている等と一定の場所に行くと絶えない。
時たまその"想像"をしすぎて現実のつかさが恐怖で身体をびくつかせるほどだ。ここまで来るともはや病気の一種なのかもしれない。
だから部屋においてある日本人形の表情が毎回毎回違ってみえるのも視力が悪いせいだろうし、建築して三年ほどしかたっていないというのに廊下がギシギシとなるのも、寝ようと天井を見ると首をつって垂れている誰かが見えたような気がするのも全ては"想像"・・・いや、"妄想"なのだろう。
妄想が現実にまで侵食してくるなんてそれこそまさにホラーである。
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"幽霊を視ているフリ"をしているのか"幽霊が視えないフリ"をしているのか、さてどっちでしょう?