「―――。」 「………。」 先程の二人きりの楽しい会話が途切れた。明智は会話をしているうちに悪戯心が芽生えてしまいつかさを押し倒した。 それから至近距離で互いに目を合わせてだんまり。 男に押し倒されたというのにつかさは不思議そうに明智を見上げていて――――苛ついた。 「つかさ」 「え、なに?」 まるでいつもの事みたいに、この現状の中でも普通に返事を返してくるつかさ。 それがまた気に入らなくて魔がさしそうになるのだ。 「…もう少し危機感を持ってみたら如何です?」 「危機感?みっちゃんに?どうして?」 「―――つかさは男ですよ?こうやって押し倒されて何とも思わないのですか?」 たとえ仲がよくても押し倒されれば悲鳴の一つや恐怖心をみせるはず。それが普通。 普通だというのにこの子は…。 「だってみっちゃんだから!」 などと元気に返してくる。 わたしだからなんだというのか。わたしだって男であり性欲もある。だというのにつかさのいうソレは信じてる、という類ではなくて―――――… 「イデアを通してみてるのですか?」 神格化されたわたしは絶対的な安心信用を疑う事なく寄せられている。この人なら大丈夫。この人なら安心。 なぜなら、神だから。 「違うよー、信じてるから」 「フフ、どうでしょうね」 神様だから、綺麗だから。 他人を汚すことなどしない。 できない。 不思議と笑いが込み上げてきた。 「フフフフッ…つかさは本当に…」 悪意がなくて困る。 意思をもって他人を汚すという思考がみつからない。人間には悪意が必要だというのにこの子にはない。 わたしが逆に盲信的になってしまうぐらいに。 「つかさは本当に馬鹿ですねえ」 「突然けなさないでよっ」 「褒めているのですよ」 「えー」 『理想のかみさま』 (導かれるままに) [*前] | [次#] |