にい



もう少し離れようと立ち上がると木々の合間から赤い日差しがさしこむ。

夕暮れの日は黄昏色に染まり燃え尽きようとしていた。もうすぐであの真っ暗闇の世界が訪れる。思い出させない記憶に身震いし足を急がせた。

急いだのは間違いだったのかもしれない。がさりと周囲の草むらから音がなり、それらに注意を向けるまえにネットの形をした糸によって地面に倒れこんでいた。


「―――くっ」

どうにか逃げ出そうと起き上がろうとするが粘着性の高い糸を自力で切ることなど出来るわけもなく、コアルヒーのボールを手に取ろうとした。

―――それも結局できなかったが。




「これ以上動くと、てめえが火達磨になるぜ?」


傍らにバオップを従えたサンヨウシティのジムリーダーの一人。奪ったポケモンを取り返そうとおってきたが敗北したはずのポッドだった。いつでも火を吐き出せぞ、とバオップが口から小さく火を吹く。そして反対側からもう一つの声。

「やっと、捕まえたね。」

少しパーマのかかった髪。緑の服。傍らには虫タイプのハハコモリ。この状態でも彼の情報はすぐに浮かび上がり、彼もまたジムリーダーの一人、ヒウンシティのアーティなのだと悟る。

「いやー、君たちのジムにお茶しに行ったつもりがこんな事する羽目になるなんて。まあ、悪い子にはきちんとお仕置きしなきゃだけどね」

その軽い声と共にハハコモリから粒子が飛び出し、つかさの身に降り注いだ。何処か甘い花の匂い。花粉なのだと理解したときには急激な睡魔により視界はにじみぐしゃぐしゃに混ざり合った色を認識した後に――――真っ暗闇へと落ちていった。













暗闇になるといつも思い出す。



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