はち




「・・・・・・この子、もしかしたらプラズマ団とやらの中であまり良い待遇されてないのかも。さっき呼びにいった時、餓死寸前まで放置すれば良いって泣いてたんだ」

「・・・・・・そう、ですか」

まるで己を"道具"としか見ていない言い方に苦い気持ちを感じる。

彼女、つかさはプラズマ団でどのように生きてきたのだろうか。デントの言うとおりあまりいい待遇をされていないのならば、今回、ジムリーダーである彼らから奪い損ねた事によりどのような仕打ちがあるのか。

人事、といえばそうだが目の前で今にも壊れたように首を振り続けるつかさを見ていると可哀想に思えてくる。

「おい、どうしたんだよそんなところで、って目ぇ覚ましたのか?」

「―――さい」

いつまでも戻ってこないコーンを心配してかポッドもやってくる。それと丁度に首を振っていただけのつかさから言葉が搾り出された。酷く弱弱しく、酷く怯えている声。髪を握る手に更に力がこもる。


「・・・どうしたんだよ、こい、つ」

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・っ!次は失敗しないから。上手くやるから。ごめんなさい。痛いよおとうさま。良い子にするから。我慢するから。なんでもするから。捨てないで。暗い所にもういれないで。ごめんなさい。ごめんなさい・・・」

「っ」
「・・・っ」
「なっ」

その場にいた三人は息を呑んだ。

突然謝り始めたと思ったら、次々と間もなく吐き出される言葉の数々。ごめんなさい。いたい。良い子にする。なんでもする。我慢する。だから暗い所にいれないで、捨てないで。それらの言葉から簡単に彼女の待遇がどれほど酷なものなのかが想像できた。

デントが思っている以上に彼女の待遇は悪く、そのおとうさま、つまり父親からも酷い仕打ちを受けているのだ。彼女はそのプラズマ団に居続け、仕置きを受けないようになんでもやってきた。

そこから逃げればよかったのだ、とその仕打ちに怒りながら思ったが、デントは目の前で縮こまり未だ謝る姿を見て"彼女の居場所はそこにしかなかったのだ"と悟った。




・・・哀しくなった。



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