くう



「・・・しっかりするのです」

ごめんなさい。謝り続ける彼女の今にも髪を千切ってしまいそうなほどの手を掴みコーンは叫ぶ。

「しっかりするのです!ここには貴女のいう"おとうさま"はいませんよ!起きなさい!」

その声が届いたのかはわからないがつかさは面を上げて泣きくじゃった顔でコーンをみた。「い、ない?」と小さく呟いてすぐ正気を取り戻したのが目を見開きコーンの手を叩き外に飛び出していってしまった。

あまりの出来事に呆然と見送ってしまった三人だが、コアルヒーが呼び止めるように「くぁー!」と鳴いたのを切っ掛けに急いで彼女を追いかけた。







****


恥だ。

恥だ恥だ恥だ恥だ恥だ!!


日が沈み街灯の灯った中、つかさは灯りの中という狭い範囲で逃げていた。

暗い所にくると動けなくなりそうで怖いのだ。怖さで足がすくみ一歩も動けなくなりそうで。そうすれば日が昇るまでその怖い暗闇の中を過ごさなくてはならない。

心の根まで張り付いたその恐怖は無意識という形でつかさの行動を狭めていた。


つかさは頭に血が上っていくのと、しかし矛盾として思考が冷えていくのを感じながら走った。



敵に弱みを知られた。


誰にも話したことのない弱音を聞かれた。



「―――っ、っ・・・っ」


涙が止まらない。

泣きながら走る姿は通行人の目をひいてちらちらとこちらを見てくる。

見るな!そう叫びたくとも、胸の中の羞恥に耐えるので精一杯でつかさは只走り続けた。何処まで走り続ければいいのかわからない。つかさには、私には"居場所"がない。




どこで、足を止めていいのかわからない・・・。



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