#14
珍しく目が覚めたからコンビニに出掛けた。
寒い。夜も寒いが朝もクソみてェに寒い。思わずポケットに手を突っ込む。
周囲を見渡せば、忙しなく移動する人たちが誰にも関心を止めることなく歩いてる。
サラリーマン、OL、学生......そうか。それで目が覚めたのか。
思っていた以上に自分が深刻な病に掛かってしまっている事に気付いた。
おれは、彼女が何処の大学を受験するかなんて知らない。
何を勉強するためにそこへ行こうとしているのかも知らない。
ただ、わざわざ夜遅くまで塾に通い、勉強している事だけを知っている。他は何もない。
頑張る姿をもう1年くらい見続けてるんだなァと思うと我ながら情けねェし少しキモい気もする。
カタを付けたいような付けたくないような...嫌でも時は迫ってる。
寒さが薄れた頃に春が来る。
春が来れば...彼女の姿を見る事は無くなってしまうかもしれない。
すでに新生活特集の組まれた雑誌を見つけ、溜め息が出た。
受かるといいな、は嘘ではない。
ただ今のままの生活も悪くは無くて、終わりなんか来なければいいとも思っている。
「......ん?」
ぼんやり雑誌を見つめる端、何かが動くのが見えて顔を上げた。
「え?」
同じ制服を着た学生の団体。その中には口をパクパクさせて手を振っている子たちがいる。
おれに手を振っているのは一目瞭然。だけどその足が止まる事はない。
だからおれは慌てて雑誌を放り投げて出口へと走った。
「頑張れよ!!」
この言葉で良かったのかどうかなんて頭にはない。
行き交う人たちの視線がおれに集中したとしても関係ない。
先に進んだ制服の団体が全員振り返っても...おれには一部の人間しか見えない。
「「行って来ます!!」」
笑顔で手を振ってくれた男の子と女の子。
その女の子の手には淡いピンクのお守りが握られていた。
2019/02/23 14:35
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