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#15

受験が終わると、塾の夜間補習もまた終わった。
塾自体は通ってはいるけど、前ほど遅くまで軟禁される事などなくなった。
つまり...あの店に行く理由がなくなってしまった。

いや、行こうと思えば行けるし別にいいんだけど...
今は家に帰れば私の分もご飯が用意されている。それを無駄にしたくない。
多分、宍戸も同じ事を考えてるんだと思う。誘う事も誘われる事もなくなった。

最後にエースさんを見たのは受験日。
私たちよりも必死な顔をして「頑張れ」と言ってくれた。
その顔が今でも目に浮かぶし、お礼も言いたい。会いたいと思ってる。
だけど...合格発表まで待とうと、何となく思っている自分がいる。

解答の発表はすでに掲示されている。
自己採点では一応、合格圏内にいる。私だけでなく宍戸も。
第一希望の大学は自宅より少し距離があるけど通いになる予定で生活は変わらない。
それに関しても宍戸も同じで、だけど一人暮らしをしたいとか何とか言って親を困らせてるらしい。

私はどちらかと言えばバイトがしたいと両親に話した。
今までずっとそういうのをしていなかったし、出来る限りお小遣いは自分で稼ぎたい。
そう思って求人情報を眺める日々でもある。学生バイト大歓迎的なとこを。

オシャレなカフェ、素敵な雑貨屋、社割欲しさにアパレル関係...
パラパラとめくるページが妄想を膨らませて面白い。
面白いけど...本当は行きたい場所は一つしかない。その場所は、何処にも載ってなかった。

未だカリカリムードの漂う教室。制服を着ていられるのもあと少し。

明日は母と共に入学式用のスーツを買いに行く事が決まっている。
まだ受かったとも言えないのに...準備しておくに越したことはないらしい。
それにどうやら宍戸と宍戸母も参戦するらしい。幼馴染みとはいえ、何処まで仲良しだよって話。

宍戸よりも、エースさんに会いたい。
それをうっかり口にしないよう、彼のお守りをギュッと握りしめた。

2019/02/23 15:03
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