NOVEL GAME γ | ナノ

if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【006号室 エース】
「.........疲れた」

確認作業後、本当にドッと疲れちゃってベッドに腰掛けた。
こんなんじゃ先が思いやられる。生命ゲージがどんどん減ってるもの。

「そういや、拘束時間って何時まで?」
「え?」
「おれ、マルコと飲みに行く予定あんだけど」

.........えっと、何をおっしゃってるんでしょう。

「今日は泊まり、だけど?しかも私と相部屋で」
「.........はァ?」

え、何その反応。チケットと一緒に詳細資料が同封されてなかった?
宿泊費、食事はタダで給料が出るんだよコレ。社内抽選だったみたい。
その代わり、誰とも知らない相方がいるとはあったけど...異性だったとは。

「ちゃんと資料読んでないの?」
「資料とか入ってなかった」
「嘘。一応、持って来たけど見る?」

マルコ主任がくれた書類をポートガスくんに手渡す。
ポードガスくんと主任って仲が良いからきっと渡してると思うんだけど...

「.........マジか。けどおれ本当にもらってねェ」
「渡し忘れかな」
「いいや、マルコの陰謀だな」

どんな陰謀ですか。あ、資料をクシャッとしないで下さい。
慌ててポートガスくんから資料を取り戻してシワを伸ばしてカバンに仕舞う。
陰謀説はさておき。此処まで落ち込むポートガスくんとか初めて見た。
ホラー系が苦手...なわけないか。そんなに飲みに行きたかったのかな?

「つーか、おれ着替え持って来てない」
「あ、それなんだけど準備しなくていいんだって」
「はァ?あ、同じの着といても問題ないか」
「え?そういう問題?違うよ」

思わずポートガスくんにやんわり突っ込みを入れてしまったよ。
私も資料を見て必要物に着替えがないことに気付いてマルコ主任に聞いた。
そしたら準備されてるって話だったから何も持って来てない。
下着もいらないって話だったけど...そこは準備した。ほら、サイズとか...ねえ。

「なァんだ。準備されてるなら安心だな!」
「あ......うん」

前向きだなあ。どうしたらそこまで前向きになれるのか。
そんなことを考えていたら部屋のインターフォンが鳴った。その音に私たちはお互いに顔を見合わせた。

「お、誰か来たぞ!」
「.........ワクワクするとこなの?」
「当たり前だろ!ガイコツとか遊びに来たかもしれねェじゃん!」

.........そうだったら、全力で扉を閉めてバリケード張らないといけない。
何故か妙にテイションが上がり出したポートガスくんが本気で来訪者を迎えようとしている。
とりあえず色んなことを想定して、私も彼の後ろに続いた。

部屋の鍵を開ける





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【006号室 エース】
「フロントです。お着替えをお持ち致しました」
「「.........」」

ドアを開けるとワゴンを押して来たと思われる青年が居た。
いや、青年というか......誰をモデルにしたのか全く分からない程にイケメンなアンドロイドだ。
あ...ガッカリしてる。ガイコツじゃなかった所為かな?

「.........こいつ、誰かに似てる」
「うーん...あ、ウチによく来る丸眼鏡した人に似てる」
「あァ、氷帝の侑士。確かに似てる」

けど、全てがその人ってわけじゃなくてもっとこう...パーツが組み合わさってる気がする。
よく見たらポートガスくんにも似てるような気もするし。
あ、いや、それはさておき。ロイドくんは何かを認識しながら紙袋をポートガスくんに突き付けた。

「こちらが貴方様のお着替えです」
「サンキュ」
「こちらは貴女様のお着替えです」

個別認定はされていても名前はプログラムされていないらしい。
ウィーン、カタカタ...と鳴っているけど高性能に仕上げるんならそこまでやって欲しい。

「それでは失礼致します」

ゆっくりお辞儀してロイドくんはワゴンを押してエレベータの方へと向かった。

部屋に戻る





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【006号室 エース】
ロイドくんから受け取った紙袋を片手に、私はしばし言葉が出なかった。
多分、一日を終えた時より疲れてて帰りたくて堪らないんだろうと思う。
だけどそんな私とは裏腹に...ポートガスくんは何故か元気を取り戻しつつあった。

「着替えようぜ!どんな服なんだろうなァ」
「.........う、うん。スーツも疲れるし」

もっとラフなものに着替えておきたい。
さっきハンガーも見つけたし、着替えてもスーツは干せるし...ってちょっと!!

「待っ、わ、私、脱衣場で着替えてくる!」
「ん?あァ」
「終わったらちゃんと声掛けるから!」

もうすでに脱ぎ掛かっていたポートガスくんにちょっと焦った。
見つけたハンガーをベッドに投げ置いて可愛らしい紙袋を手に脱衣場へ向かう。
よく考えたら...どんな着替えを渡されたのか確認するのを忘れてた。
ガサゴソ、新品の袋を取り出して一緒に梱包されてた紙を見て...絶句した。

これを着ろとのことですか?これって...コスプレってやつですか?。
ポートガスくんは特に何も言って来ないってことは...着替えてるんですよね?

着替える





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【006号室 エース】
「.........入ってもイイですか?」
「あァ。とっくに着替え終わってるから」

お互いに声のトーンは低い。テイションももう上がらない。
色々考えることはある。あるけど、ゆっくりと脱衣場から出ると...面白いものが居た。

「お、お揃いじゃん」
「.........本当だ」
「ゴースト神父ってやつらしい」
「私のはゴーストシスターでした」

お互いに何処かボロボロ仕様で何とも言えない、けど人目で神父とシスターだと分かる衣装。
十字架が刺繍されている所為なんだけど...何だろう、何とも言えないコスプレだ。

「意外とフツーの服で良かったよなァ」
「(え!?)......あ、はい」

普段、ポートガスくんはどれだけ奇抜な服をお召しになっているのでしょう。
私服姿とか見たことないし...少なくとも私はこの服は普通っぽくは見えません。
色々複雑な気持ちが悶々と湧いてる所為でちょっと言葉が見つからない。
そんな時だった。

――ドンッ。

私たちの肩がビクッと震えて音がした方を見る。ドア付近、さっきまで無かったものが、ある。
箱だ。どういうことか分からないけど、プレゼントみたいな箱が落ちてる。

「何だァ?箱が落ちて来たぞ」
「ちょっ、迂闊に近づいたら...っ」
「けど中身見ねェわけにはいかねェだろ」

って、何故そんなに楽しそうに近づいてるのポートガスくん!?
よく見て、かなり毒々しい赤いリボンの掛かった箱だよ。何か不気味だよソレ。
私なら開けるを躊躇ってしまう......と思ったら男らしく開けましたよ!!

「!?」
「......何だコレ」
「え、何、何が入ってたの!?」

ポートガスくんが中から取り出したのはペンダント。変な紋様入りの石が付いてる。
えっと...よくある護符みたいなもの?でも、それをどうしろと?

「発信器だってよ。すげェ金掛けてる」
「発信器!?」

GPS的なものってことよね。位置関係を知るための...本当にお金掛かってるよ。

「これ付けたら警報が鳴らないってさ」
「意味もなく変な場所へ行かないための策ってことね」

何か納得するアイテムだった。だけど、だけどですよ。
このタイミングでそれが私たちの手に届いたってことは...

「よし!行くぞ!!」
「うう...やっぱり?」
「大丈夫大丈夫。いざって時は一緒に逃げりゃいいだろ?」

ニカッと笑うポートガスくんに安心するようなしないような。
基本的には出掛けたくない。でもポートガスくんはウキウキしている...どうしよう。

出掛ける





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【006号室 回想】
ポートガスくんと部屋を出て、廊下を端から端まで散策。仕掛けは特になし。
エレベータは相変わらずの鏡張りで血糊べったり。気持ち悪い。
フロントへ降りるとロイドちゃん(弐号機)が居て...何故か外には出られない。
そのエリアをちょっと散策しようとしたら所々でけたたましい音が響いた。
立ち入り禁止エリアがあって、近づいたら承知しない!と言われてるみたいだった。
ポートガスくんはそこを何度も行き来して遊んでいて...正直怖かった。

因みにロイドちゃん(弐号機)に「部屋を分けて欲しいと告げる」と、
「お部屋の変更は何があってもご遠慮頂いておりますのでご了承下さい」と言われた。

同じエリアには例の商品を販売している場所もあって、
ロイドくん(イケメン)が応対してくれるらしかった。相変わらず表情は乏しい。
ついでに衣装だけでなくお菓子なんかも売られていた。試食は不可。
アルコールなんかも販売されているらしいけど、免許証等を出せと言われた。

そこからまた血糊ベッタリのエレベータに乗る。
ボタンは2(食堂)、1(フロント)、B1、B2とあるけど押せたのは1とB1のみ。
どういう操作なのか、全く反応しないってことは...仕掛けなんだろうと思う。

.........と、いうことで散策終了。
カードキーで006号室へと戻って来た。

部屋に戻る





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【006号室 エース】
「.........あれ?」

ぐったりして戻った部屋にあからさまに変化があった。
まず、机に置きっぱなしにしていたペンダントが入っていた箱が消えている。
その代わりみたいに置かれている一輪挿しの...椿。何か怖い。

とことこ近付いて、ふと傍にあった三面鏡の扉がうっすら開いていることに気付いた。
当然、見えちゃうわけです。血糊で書かれた「read me」という文字...

「.........ひッ」
「誰か不法進入してらァ」

そ、そういう問題ですか?確かにそうだけど演出を見て下さい。
鏡の血文字、一輪挿しの椿...その花瓶の下にメッセージカードがあることに気付いた。
白いカード、赤のインク、綺麗な字でたった一言「食事の準備が整っております」と。

「お、メシだメシ」
「.........はあ」

確かにそう書いてありますけど、ねえ。
ドッと疲れて大きな溜め息を吐いた途端...椿の花がポトリとカードの上に落ちた。

「ひッ、」
「溜め息吐くから落ちるんだぜ」
「わ、私の所為ですか!?」

縁起でもない。落椿って...昔の人は首斬りを連想させる花だって言われる。
全体的に洋風なのに、こんなところで和のテイスト持って来なくても...

「何でもいいけどよ、メシだってさ」
「.........はい」

食欲はガタッと削れたけど、噂ではコース料理だと聞いている。
これだけ凝ってるんだから料理も間違いなく美味しいはず。

たった今、部屋に戻って来たけど腹ペコらしいポートガスくんがまた動き出す。
置いて行かれても嫌だから、私も慌てて後に続いた。

大食堂へ向かう





















if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう
【2F 大食堂】
タヴィンチ作、最後の晩餐を思い出した。
趣と言うか雰囲気ある大食堂だけど、うん、もう暗いよ色々。
ここまで長時間薄暗いところに居ると目が悪くなりそうな気がする。

「でけェなテーブル」
「そうですね...」
「おれの席は...っと」

長すぎるテーブルにはきちんと私とポートガスの名前が書かれたカードが置かれていた。
てっきり端と端、会話も出来ない両端で淡々と食事をするのかと思ったけど、
これには配慮されているらしい。いや、これって配慮...なのかしら。
対面配置で...ポートガスくんはわざわざ回り込んで向こうへ行かなければならないらしい。

「どんなメシが出るんだろうなァ」
「えっと......え!?」

ミラクル!?い、いつの間に向こう側に行ったのポートガスくん!
たった今まで横に居たような気がしたのに...え?何が起きたの?

「どうした?腹痛ェのか?」
「.........いいえ」

落ち着こう。うん、こんなところだものミラクルくらい起きるよ。
問題はそこではなく、これから起きることについて考えよう。

着席すると何故か食堂内にチリンチリンチリン...と鈴の音が響き、
カートの音だろうか、食事を運ぶ音が聞こえ始めた。

「お、全自動」
「.........洗濯機みたいだよポートガスくん」
「でも自動的な仕掛けですげェな」

確かに。凄く凝ってるよ。知恵と技術とお金が総動員している。
だからそこは信用してるけど...何だろう、この不安は。

ウキウキしているポートガスくんの待ちに待った料理は生身の人間が運んで来た。
重々しいカートを押して来たのはイケメンの男性、但し、腐乱気味。
それを配置してくれたのは美人の女性。但し、こちらも腐乱気味。
つまり、ゾンビ系でいらっしゃいます...その美貌が勿体ない。

「お、うまそうじゃん」
「.........う、うん」

よく出来た腐乱男女にも気付いてあげて、とは言えない。
ある程度の準備が整ったところで注がれたシャンパンで乾杯し、食事を頂いた。
食事自体は文句なしで美味しかったけど...サイドに控える美ゾンビさんたちには引いた。

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if...の扉 #10

ミックスランダム/扉の向こう

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