【005号室 宍戸】「.........宍戸、着替えた?」
「.........ああ」
お互いに声のトーンは低い。テイションももう上がらない。
色々考えることはある。あるけど、ゆっくりと脱衣場から出ると...面白いものが居た。
「.........何その服」
「.........お前こそ」
「私は赤ずきんちゃんらしい」
「だから俺は狼男なのか」
狼男というよりは...駄犬っぽい、とは言えないか。
こんなメルヘンな衣装に身を包む日が来るとは思わなかったよ。マジで。
いや、可愛いんだよ。可愛いけど...私が着るとか有り得ない服です。
「「.........」」
どんより、お互いがどうしようもない空気に見舞われてます。
沈黙。色々複雑な気持ちが悶々と湧いてる所為ですかね。話す気力もない。
そんな時だった。
――ドンッ。
私たちの肩がビクッと震えて音がした方を見る。ドア付近、さっきまで無かったものが、ある。
箱だ。どういうことか分からないけど、プレゼントみたいな箱が落ちてる。
「.........取って来てよ宍戸」
「.........お前が行けよ」
「お願い。取って来て」
手を合わせて拝めば優しい宍戸がブツブツ言いながら箱の回収をしてくれた。
毒々しい赤いリボンの掛かった箱...何か不気味だ。
私なら開けるを躊躇ってしまう......とか思ったら宍戸が男らしく開けおった!!
「ちょっ、爆発とかしない!?」
「しねえだろ......?」
「え、何、何が入ってたの!?」
宍戸が中から取り出したのは......ペンダントだ。変な紋様入りの石が付いてる。
えっと...漫画とかでよくある護符的なカンジ?でも、それをどうしろと?
「.........発信器だってよ」
「発信器!?」
ハイテクノロジー!どんだけ投資して出来てるの此処。
「説明書付いてる。これ付けたら警報が鳴らないってさ」
「.........成程、逃走防止策が講じられていたのね」
で、ですよ。このタイミングでそれが私たちの手に届いたってことは...
「部屋の外へ行けってことか」
「うう...やっぱり?」
「ま、此処に居ても仕方ないし。出掛けてみるか?」
どうしよう。出掛けたくない。でも宍戸も付いて来るみたいだし...
出掛ける 【005号室 回想】宍戸と部屋を出て、廊下を端から端まで散策。仕掛けは特になし。
エレベータは相変わらずの鏡張りで血糊べったり。気持ち悪い。
フロントへ降りるとロイドちゃん(弐号機)が居て...何故か外には出られない。
そのエリアをちょっと散策しようとしたら所々でけたたましい音が響いた。
立ち入り禁止エリアがあって、立ち入るんじゃねえよ!と言われてるみたいだった。
さすがの宍戸もビクッとしてた。これはちょっと笑えた。
因みにロイドちゃん(弐号機)に「部屋を分けて欲しいと告げる」と、
「お部屋の変更は何があってもご遠慮頂いておりますのでご了承下さい」と言われた。
同じエリアには例の商品を販売している場所もあって、
ロイドくん(イケメン)が応対してくれるらしかった。相変わらず表情は乏しい。
ついでに衣装だけでなくお菓子なんかも売られていた。試食は不可。
アルコールなんかも販売されているらしいけど、免許証等を出せと言われた。
そこからまた血糊ベッタリのエレベータに乗る。
ボタンは2(食堂)、1(フロント)、B1、B2とあるけど押せたのは1とB1のみ。
どういう操作なのか、全く反応しないってことは...仕掛けなんだろうと思う。
.........と、いうことで散策終了。
カードキーで005号室へと戻って来た。
部屋に戻る 【005号室 宍戸】「.........あれ?」
ぐったりして戻った部屋にあからさまに変化があった。
まず、机に置きっぱなしにしていたペンダントが入っていた箱が消えている。
その代わりみたいに置かれている一輪挿しの...椿。何か怖い。
とことこ近付いて、ふと傍にあった三面鏡の扉がうっすら開いていることに気付いた。
当然、見えちゃうわけです。血糊で書かれた「read me」という文字...
「.........ッ」
「うわ...気持ち悪いなコレ」
鏡の血文字、一輪挿しの椿...その花瓶の下にメッセージカードがあることに気付いた。
白いカード、赤のインク、綺麗な字でたった一言「食事の準備が整っております」と。
「普通に案内出来ないものかな...怖いよマジで」
「それじゃ面白くないんだろ」
確かにそうなんだけどさ。
ドッと疲れて大きな溜め息を吐いた途端...椿の花がポトリとカードの上に落ちた。
「ヒッ、」
「.........凝ってんなあ」
「こんなとこまで凝らなくていいし!」
縁起でもない。落椿って...昔の人は首ちょんぱを連想させる花だって言われてたんだよ。
全体的に洋風なのに、こんなところで和のテイスト持って来なくてもいいやい!
「何でもいいけどよ、メシだってさ」
「.........うん」
食欲はガタッと削れたけど、コース料理なんだよね。
これだけ凝ってるんだから料理も間違いなく美味しいはず。
たった今、部屋に戻って来たけど腹ペコらしい宍戸がまた動き出す。
置いて行かれても嫌だから、私も慌てて宍戸の後に続いた。
大食堂へ向かう 【2F 大食堂】タヴィンチ作、最後の晩餐を思い出した。
趣と言うか雰囲気ある大食堂だけど、うん、もう暗いよ色々。
ここまで長時間薄暗いところに居ると目が悪くなりそうな気がする。
「もう雰囲気作りとかお腹いっぱいだよ」
「つーか、どうやって向こうに付けと?」
「.........気合いだよ気合い」
長すぎるテーブルにはきちんと私と宍戸の名前が書かれたカードが置かれていた。
てっきり端と端、会話も出来ない両端々に配置されて淡々と食事をするのかと思ったけど、
これには配慮されているらしい。いや、別に食事は淡々と食べてもいいんだけど。
対面配置で...宍戸はわざわざ回り込んで向こうへ行かなければならないらしい。
「別に隣でも良さそうなものを」
「文句言わずに行けし」
着席するまでにどれくらい掛かるんだろう。
そう思っていたら何と宍戸ったらテーブルの下に潜り込んじゃいましたよ。
「ちょっ、」
「こっちの方が近いし」
いやいや、そういう問題?
.........いや、そういう問題だ。何でもありだよ此処まで来たら。
着席すると何故か食堂内にチリンチリンチリン...と鈴の音が響き、
カートの音だろうか、食事を運ぶ音が聞こえ始めた。
「真っ当なメシだよな」
「コース料理。真っ当じゃなかったら跡部に言う」
「まあ、あいつのことだから手を抜くことはねえか」
全てにおいて手を抜くことを知らない跡部を私たちは学生時代から知ってる。
だからそこは信用してるけど...何だろうなこの不安は。
会話もなく悶々とする中、料理は生身の人間が運んで来た。
重々しいカートを押して来たのはイケメンの男性、但し、腐乱気味。
それを配置してくれたのは美人の女性。但し、こちらも腐乱気味。
つまり、ゾンビ系でいらっしゃいます...その美貌が勿体ない。
「.........辛い。私、辛いよ宍戸」
「さすがに...これはないな」
よく出来た腐乱男女に見守れらながら食事って...どうよ。
ある程度の準備が整ったところで注がれたシャンパンで乾杯し、食事を頂いた。
食事自体は文句なしで美味しかったけど...サイドに控える美ゾンビさんたちには引いた。
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