キミがいい






『あ、もしもし神くん?今会社終わって出たとこ.....っ!』


携帯電話片手に会社を出た瞬間「お疲れ」という声が耳にあてた携帯から、そして目の前に立つ大好きな彼から、同時に聞こえたわけで。


『来てくれたの?ありがとう!』

「どういたしまして。それよりほら、行くよ。」

『えっ....、どこに....?!』


海南大附属高校から海南大学へ共に進学した為、七年は同じ学校にいたけれど、社会人になって二年目の今、今日で付き合ってめでたく一年を迎えるのだった。前々から仕事終わりに会って二人でお祝いしようとは言っていたものの、どこで何をするのかは「俺に任せておいて」と神くんはそれの一点張りで。会社を出て早々早歩きで向かったのは駅だった。


『....うーん?見当がつかない.....。』

「まぁそのうちわかるよ。」


ニコニコと楽しそうな神くんは今日も今日とて爽やか好青年で相変わらずかっこいい。勝手に片思いをしていた頃よくこの美貌と抜群のスタイルを勝手に眺めては拝んで「ありがとう、神様...」と天に向かって感謝してたなぁ。あ、ちなみに神様仏様の方の神様だから。神くんを様と呼んでたわけじゃない。


二駅進んだ後に神くんは私の手を引いて降りると「ほら、バレた」と笑う。同じように電車から降りた人たちはみんな揃って青いユニフォームを着用しており頬に日の丸のイラストを描いた人もいるくらいだった。


『サッカー観戦....?!』

「そう。スポーツ観てスッキリしたいって言ってたでしょ?」


サッカー好きじゃん、なまえ。


神くんはそういうと「はい」と私に青いものを渡してくる。それはどこからどう見ても周りの人々が着用しているそれと同じで。「自分のもあるんだ」と同じものをもうひとつ手に持っていた。


『準備がいい....!』

「まぁね。やるからにはとことん楽しむ。」


神くんらしいなぁ、だなんて、そんなことを考えているうちに会場へと辿り着く。神くんはポケットから二枚のチケットを取り出すと私の手をとり人混みを止まらず器用に潜り抜けていく。あぁ、もう、こういう時でさえ「好き」が溢れるんだよなぁ。何するにも器用なんだから....。








『こんないい席で観戦できるの....?』

「まぁね。チームメイトがあの人と友達らしいんだよ。」


神くんはそう言ってフィールドの中のひとりを指さした。


『日本代表の選手と、友達なんだね.....』

「スポーツ繋がりって感じかな?」


ただのサッカーではない。これは日本代表戦。日の丸を背負う男たちの熱き闘いなのだ。よく見れば神くんが指さしたのってめちゃくちゃ有名な人じゃん。あんな有名な選手と友達だなんて、いくら同じプロとはいえ競技は違うわけだから....すごいなぁって、思わずにいられないわけだ。


「俺もなまえも10番のユニフォームね。」

『やっぱりエースだから?』

「うん、かっこいいよね、10番って。」


ニコニコと楽しそうな神くんは大学を卒業するなりBリーグのチームへと入ったプロのバスケットボール選手で。思えばさっきからチラチラと女性からの視線を感じるような気もするんだけど....あれ、もしかして、神くんへの視線.....?


「たまには二人でスポーツ観戦ってのも悪くないね。」


普段はあっち側だからな、俺。


神くんはそう言って楽しそうにニコニコと笑っている。確かにいつもは神くんはプレーする側の人であって、私は高校時代からずっと彼の試合を見届けてきた側の人間であるわけだ。まさかこうして近い将来、彼の「彼女」になり、当たり前にデートするだなんて、あの頃の私は夢にも思わないだろうなぁ。


「お、始まった.....!」


食い入るようにしてフィールドを見つめる神くん。スポーツ選手だし、元々運動は全般好きなんだろうなぁって微笑ましくなる。「うわぁ」とか「いけー」とかぶつぶつ呟きながらとっても楽しそうだ。


「俺もあんくらい足速かったらなぁ。」

『神くんも充分速いよ。全然負けてない。』

「....ありがとう。」


私の言葉を聞くなり神くんは優しく微笑んで頭を撫でてくる。ううっ....眩しい......同い年だっていうのにこの落ち着き具合がなぁ、魅力的すぎてだなぁ.....。


「いつまで経っても慣れないんだね。ちょっと触っただけで真っ赤。」

『だって.....!』

「あ、ほら、点入ったよ。」


神くんに見惚れているうちに日本はゴールを決めたらしくワァァと会場が盛り上がる。神くんも楽しそうにパチパチと拍手していた。


「いつまでもそうやって、俺だけに夢中でいてほしいけどね。」

『....えっ?』

「ううん、なんでもない。」


盛り上がる最中、神くんがボソッと言ったことは私の耳には届かなかった。









「いやぁ〜、なかなか盛り上がったね。」

『うん!勝ってよかった!』


試合が終わるなり帰るお客さんも多い中、私たちはぼうっと席に座ったままだ。神くんは余韻に浸るような表情で「観る側も楽しいなぁ」と呟いている。


『ねぇ、私思ったんだけど....』

「うん?」

『スポーツ観戦もすごく楽しいし、隣に神くんがいて一緒に観るのって新鮮だったから幸せだった。』


神くんは真剣な表情で相槌を打ってくれる。


『でも....やっぱり応援するなら神くんだなって。視線の先にいるのは、神くんであってほしい。』


私はやっぱりバスケットが一番好きだ。それも、「神くんがプレーする」バスケットが。あの綺麗なスリーポイントが、息の合ったプレーが、全力でコートを駆け回る神くんが、大好きなんだよ。


「....あんまり可愛いこと言うんじゃない。」

『あわわっ、髪の毛が.....!』

「ほら、帰るよ。今日は泊まっていってね。」


手をとられて歩き出す。心なしか神くんの手が温かいような気がして思わず笑みがこぼれてしまった。






ONLY YOU!


(....これからもよろしくね、なまえ)
(こちらこそ、よろしくお願いします!)






あすか様

この度は企画にご参加いただきありがとうございました!いつもいつも大変お世話になっております(^^)強心臓の連載も決まりましたのでまたぜひよろしくお願いします!!スポーツ観戦は書くのが初めてでとても緊張しました(*_*)なんやかんや神くんがバスケットを続けてくれていたらいいなぁという願望がこもった作品となりました....。応援する相手も応援される相手もやっぱり「君がいい」という二人の意見からのタイトルです!今後ともよろしくお願いします!!








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