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暖かくなってきたなと誰もがそう感じる三月…もうすぐで三年へと進学する予定の三井…出席日数を確保する為渋々学校へと顔を出した三井は堀田達と共に授業を放ったらかしにしてフラフラと校内を歩き回っていた。


「いたよ、アイツ。」

「ふぅん、アレが宮城…ねぇ。」


三井はそう言ってニヤリと笑う。聞くところによるとバスケ部の一年で中々の技術を持ったプレイヤーらしい。名を宮城リョータ。確かに髪型なんかも他の奴らと違うし、生意気な雰囲気がぷんぷんと…


「いいぜ、やっちまおうじゃねぇか。」

「そうだね、三っちゃん。一発しめとくか!」


バスケ部のルーキー…?そんなもん潰す以外に選択肢はない。三井はあっさりと決め屋上に宮城を呼び出すよう指示を出した。こちとら六人と人数をかなり集めたがそんなものはもうどうだっていい。ぶっ潰してやる。ムカつくんだよ、テメェみたいなやつが一番…


「ちっ…」


挑まれた喧嘩から逃げる気もないらしいどこまでも男気を見せる宮城に三井は余計に腹が立った。粉々になるまでやってやると六対一という圧倒的有利な立場に余裕をかましていた時だ。


「あっ?!」


宮城は勢いよく三井に頭突きをかました。休む暇もなく殴り蹴り、まわりに止められたとしても、殴られたとしても、とにかく三井だけを倒すと決め執拗に殴り蹴り彼を潰し続けたのだ。


「ぐはっ…」

「止めろ!宮城!」


殴り返す気力もない、ふらふらとした三井。それでも宮城は手を止める気はなかった。


「三井君!」

「おい、宮城!」


あーだこーだと騒ぐまわりに目もくれず結局宮城が手を止めたのは三井の意識がなくなった頃だった。















「…っ、?!…ってぇな…」


パッと目が覚め無意識に体を起こす。しかし全身に激痛が走りそのまま元の体勢へと戻った。三井は「ふぅ…」と息を吐き冷静に状況を判断する。ここは…つーか、この痛みは…


『…よかった、やっと目ぇあいた…』

「…は、?!」


突然隣から聞こえた安堵の声。ゆっくりと痛みに耐えながら首を動かせば「はぁ…」と息を吐いたなまえがいたのだった。


「おまっ、なんで…」

『何日もずっと眠ってたんだよ…?!もう、何してるの、バカ…』


心底安心したような顔を見せたなまえ。その様子から自分がしばらく眠り続けていたのはどうやら本当のようだった。そうか、俺は宮城とかいう奴と喧嘩して…


三井はようやく状況を判断し「マジか…」と一言呟いた。色々な意味を含んだ一言だ。


『こんなになるまで喧嘩して…もう、三井くん…!』

「悪い…」

『このまま起きなかったらどうしようかと思ったんだからね…』


宮城はあの後どうなったのだろうか。俺がやられた後きっと堀田達に潰されて…アイツも俺みたいに入院か?バスケ部はこの乱闘のせいでお咎めくらってんのかな…どうなったんだろう…なんもわかんねぇや…


『三井くん、大丈夫?!』

「えっ、」

『ぼうっとしてる…まだ寝たほうがいいかも…』


んなことよりも、だ。コイツは一体いつから俺の隣にいてくれたんだ?まさか俺が眠ってた間ずっと…?まさか、学校だってあるだろうし…でも、その顔…


そんな顔されたら、俺…


「…悪かった。」

『えっ…?』

「心配かけたな、ごめん。」


前怪我した時もコイツは俺に出来る限り怪我はしないでってお願いしてきたわけだ。今の俺のこんな姿見て心を痛めてないわけがない。この不安な顔見りゃそんなんすぐわかる。あぁもう…なんなんだよ本当に…


「お前、いつからここに…?」

『わかんない…ずっと…?』

「…ありがとな。」


そっと手を伸ばす。横になったままだからお前に届きやしないってわかってはいるんだけど…


「…、?!」

『よかった…生きてて、よかったよ…』


フワッと香るいい匂い。あぁ、俺…この匂い、知ってる…


ギュッと首にしがみついた腕。まさか抱きつかれるとは思わなかったけど…うんまぁ、悪くはねぇな…なんて、バクバクした心臓を誤魔化すのに必死な俺。伸ばしかけた腕はそのままコイツの背中にそっと触れてみる。つーか、あまりに細くてなんだこの腕は…折れそうじゃねぇか。触れた肌同士…なんか、冷ぇな…


「おい、大丈夫か?」

『えっ、?』

「なんか冷ぇし…お前、俺につきっきりで全然食ったり寝たりしてねぇんじゃ…」


パッと体を引き離しなまえの顔を見つめる。今日もまた頬に貼られたガーゼ。目を丸くして俺をとらえるなりその頬は赤く染まっていく。お、体温上がったか?


『だ、だだだいじょうぶ、!』

「そうか?」

『うん、ちゃんと食べてたし…寝てたし…』


もごもごと話をしながら目を逸らすあたり、正直可愛いとか思ってしまう俺は一体…まぁ仕方ねぇか、本心だもんな…


「にしても、お前変わんねぇな。」

『…何が、?』

「顔。童顔なんだな。」


初めて会った時からコイツはちっとも変わらねぇ。大きくてパッチリとした瞳。時に綺麗で、時に可愛い顔。でもあの頃から特に変わらなくって、もうすぐ高二にしては少し幼さが残るようなその可愛い雰囲気もお前の魅力ではあるような…って、俺が語るのもおかしいけどな。


『そんなことない、よ…』

「別に悪い意味で言ったわけじゃねぇよ。」


それと比べて俺は…って話だ。


何もかも変わっちまったなぁ…


「うわ、なんか腹減ってきた。」

『えぇっ、?なんか心配して損したかも…』

「なんだよそれ!」











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