完結編







『楓さ〜ん、そろそろ起きてくださ〜い』


なまえののんびりとした声の後、騒がしい足音と共に叫び声が家に響く。


「かえでしゃん....!!!!」


パフッと流川の上に飛び込んだ小さな体。それに気付き流川はゆっくりと体を起こした。


「...む」
「かえでしゃん、あそぼー!!」
『こらこら、パパって呼んでね?』


もうすぐ3歳になる息子の頭をなまえはふわふわと撫でながら笑った。自分の真似をして流川のことを「かえでしゃん」と呼ぶ楓ジュニア。まだ3歳なのに既に同学年の中では背が高くスラッとしたスタイルをしており顔は言わずとも流川にそっくりなのである。


「おー...朝から元気だな...」
「かえでしゃんバスケしよー!!」
『パパご飯食べるから少し待ってようね、』


天気が良く窓から日差しが差し込む。そこを指差し早く遊ぼうと誘うジュニア。指差された先にはバスケットゴール。子供用の高さだ。


「おー毎日飽きねーなー」


んーと伸びをしながら流川がそう言えばなまえはクスクス笑いながら「そっくりだよ」と言う。


『バスケしか頭にないのも楓さんにそっくり。』


笑うなまえの横をトコトコ...と駆けていくジュニア。窓に張り付いてバスケットゴールを眺めまだかまだかとワクワクしている。


『ほらほら、少し落ち着いて?ね?』


ぽんぽんとなまえが頭を撫でれば早く外へ行けないのが不満なのか「む」なんて言いながらなまえに抱きついた。


「ママぁー...はやくお外ー....」
『待っててね、パパまだ起きたばっかりだからね?』


なまえにギュッとしがみつき、つまんなそうな顔で流川の方をジッと見つめる。それはさっさとご飯を食べて外へ行こうという意味なのだが何を勘違いしたのか流川もまたつまんなそうな顔で二人へと近づいた。


「....俺のなまえだぞ」
「かえでしゃんのじゃないもん。ぼくのだもん!」


顔も中身もそっくりな二人はバスケットに関しては仲が良くしょっちゅう庭で対戦の後寝転がったりしてるのだが、なまえに関しては圧倒的にライバルであった。






『....何言ってるの本当に....。』

「あぁーやめてぇー!かえでしゃんー!」
「俺が抱っこしてやる」


無理矢理流川がジュニアを剥がすと自分の腕の中におさめた。なまえはやれやれとため息をつきながら流川の朝ごはんの支度へと急ぐ。


「あぁーもうー!かえでしゃんー!!!」
「なんだ」
「ぼくのママだよー??」
「...違う、俺のなまえ」


流川はそう言いながらもやっぱりジュニアを溺愛している為抱っこのついでに脇腹をこちょこちょとくすぐればキャッキャと笑い始めるジュニア。


「キャーッ!かえでしゃっ...やめてーー!」


楽しそうな二人になまえは基本的に仲良いんだけどな...と複雑そうに笑っていた。













「かえでしゃん!!」


とある日。チームの公式練習が終わり帰宅した流川は玄関まで迎えにきたジュニアの頭を撫でた。


「ただいま。どした?」

「あのね、かえでしゃん。ぼくね、」

















「おにいちゃんになるんだってーママが言ってたのー!」


突然のことに流川は「は?」と言いながら持っていた鞄を床に落とした。ドサッと荷物が落ちとりあえずジュニアを抱えてリビングへと急ぐ。


「なまえ...!」

『あーおかえり楓ー!』


リビングに入ればいつもと変わらずのんびりとしたなまえの笑顔。どうしたのー?なんて自分の様子を見て笑っている。


「...できた、のか?」


自分の問いになまえは「あれ?」なんて驚いている。


『何故それを.....あ、ジュニアもう言っちゃったの?!』

「えへへーだって、ママ喜んでたからかえでしゃんにも言わないとと思ったのー!」


もー早いよー!なんて笑っているなまえ。流川はあまりにも幸せなこの瞬間に怖さを感じるくらいだったがまたひとつなまえとの間に宝物が増えるんだとジュニアとなまえをいっぺんに抱きしめた。


『うわっ...!』

「かえでしゃんくるしいー!!」





「........ありがとう、二人とも.........」












命に変えても守り抜くから


(かえでしゃん、おとうとだと思うよー!)
(....また男か....敵が増えるな....)
(楓さん、闘志燃やさないで.....)











Modoru Susumu
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