大学編







なまえの進学先である市内の大学は中々の有名私立大でバスケとなまえ以外興味のない流川ですら「名前は聞いたことある...」と思ったくらいだ。


『合コン?行かない行かない!』
「なんでよ〜なまえのこと誘ってってお願いされてるの。」
『無理だよ〜私彼氏いるからって言っておいて!』


なまえは相変わらずで大学内でも彼女見たさに人が集まるくらいには人気があった。大学生ともなれば当然合コンやらなんやらの誘いが増えそのたびに流川を思い断っていたのだった。


「でもさー?彼氏高校生でしょ?」
『うんー?え、まさか年下の高校生と付き合うなんて犯罪だって言いたいの?』
「違うよ。でも大学入ると先輩とか随分大人っぽいしさ?いいなって思ったりしないの?」


そう問われなまえは首を傾げた。実際流川以外の男に目が行ったことがないし中学時代からの付き合いで流川が隣にいることが当然であった為今更先輩やら合コンやらと言われても...といった感じであった。


『うーん?楓以外興味ないというか...』
「それにその楓くんもさ、まだ高校生なんだし実際のところ同学年の子の方が良いななんて思ったりするんじゃないの〜?」
『な、なんでそんなことを......!』
「だって実際そんなもんじゃん。見てよ、あの子だって...」


なまえと同じで年下の彼氏いたらしいけど速攻乗り換えたよ。と指差す先には可愛い女の子と先輩らしき男が並んで歩いていた。


『みんながみんなそういうわけでは.......』


なんとか言い返したもののなまえは内心ドキドキしていた。確かに友達の言う通り、自分は圧倒的に流川にしか興味がないものの流川はどうなんだろう...と思わずにいられなかったのだ。


中学時代からの付き合いで圧倒的信頼関係があるのはわかっている。大学生になって数ヶ月。時間が許す限り流川に会ってはいるもののバイトを始めたこともあるし流川が最高学年として一段とバスケに力を入れていることもあり、共に過ごす時間が格段に減ったこともまた事実であった。


いくら付き合いが長いとはいえ元々不安が全くないわけではない。なにせ流川楓という男は底無しにモテる。中学時代も高校時代も自分の卒業式に何故か在校生の彼もどさくさに紛れて学ランのボタンを取られていたし。意味がわからない。彼は残り一年学ランを着るのになくなったボタンをどうしろというのか。


そこに輪をかけるような友達のセリフ。


別に........楓だって私のことちゃんと大切に.........





















「ん?なんの騒ぎだろ...?」
『ほんとだね、騒がしい...』


モヤモヤしながら1日を過ごし途中まで一緒に帰ろうと言われて大学を後にしようとした時、門のところで人だかりが出来ているのに気付いた。なまえは何かの撮影でもしているのかと興味なく通り過ぎようとしたが聞こえてきた声にハッとする。


「...なまえ」


騒がしいはずなのにスッと耳に届いた声。振り向けば輪の中から出てきたのは声の主流川であり学ランを着てスポーツバッグを肩にかけなまえの手を取った。


『楓さ.....?どうしてここに.....?』
「迎えにきた。帰るぞ」


なまえは瞬時にこの人だかりが流川目当てで出来たものだと悟りやっぱりどこへ行っても人気が付きまとうのだと寒気がした。環境が変わっても流川の人気は相変わらずで........


「えぇ〜もしかして噂の楓くん?!」
『あ、うんそう...部活帰りに来てくれたみたいで...』
「初めまして〜!なまえの友達の.......」


興奮気味に話しかけてきたなまえの隣に立つ友人。流川はよく話に聞く友達だと理解し頭を下げた。


「流川です...なまえがお世話になってます」
「いやいやこちらこそ!!こんなにかっこいいと思わなくって...想像以上でビックリした〜!!」


さっきまで自分を脅かしてきたこの友人だが掌を返したように「なまえにお似合いだ〜」とか言って流川にメロメロになっている。....ったく、この子は....。










『ありがとうね、わざわざ来てくれて.....』
「いい、会いたかった」
『...私も』


隣に並んで歩きながらなまえはそっと自分の手を流川に絡めた。ポケットに手を入れていた流川の手をポケットから引き出すようにして絡めたそれに流川は少しだけ驚いた。なまえの方から手を繋いでくるなんて中々珍しく意外であったから。


「...なんかあったのか」
『...ううん、会いたいなって思ってたの。』


流川はそんな言葉を聞いて瞬時になまえが何か隠している事に気づく。


「なまえ」


その柔らかな声になまえは観念した。

名前が呼ばれて目があった際、流川の穏やかで優しい視線に話をせずにいられなかったのだった。


.....敵わないなぁ、楓には。


いつからか彼はすっかり大人になり落ち着いた男の人になった。もちろん子供っぽいところも持ち合わせているし普段はそっちの方が多いのだけれど。けれどもふとした瞬間の大人っぽい視線に観念してしまうのだ。


『...会う時間が減ってさ...楓さんが心変わりしたらどうしようなんて思ったりしてさ...ごめん、今更だし私が先に湘北に行った時もそうだったし...何言ってんだって感じだよね...』


なまえはポツポツと言葉を繋げた。


「...俺ん家来い」
『えっ.......』
「なまえに教えてやる」


言葉より手っ取り早いだろと流川は笑った。














「...なまえ、何も不安になることねーだろ」


普段より激しくなまえを抱いた後流川はベッドの上で彼女を抱きしめながらそう言った。


『うん...ありがとう楓、』
「何があろうとずっと一緒だ」


なまえが珍しく弱気になっていたことがあまりに可愛くて一瞬で理性が飛んでいったわけだが何を隠そう自分の方こそ、大学生になったなまえに不安と心配でたまらなくなっていたのだ。どんなに信頼関係があったとしてもやはりなまえはモテる。それ故に流川の不安は尽きぬのだがそれはまたなまえも同じであり互いが互いの人気にヤキモキしていたのだった。


『楓...これからもよろしくね』


どうしようもなく不安になればこうやってお互いの気持ちを確認すればいいのだと二人は笑い合った。




















繰り返す恋道


(...楓さん、大好き...)
(.......っし、もう一回する)
(えっ.........)







Modoru Susumu
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