国体編




** 流川くんのカノジョ シリーズ。





「国体のマネージャー?」
「そうなんだよ。俺はうちだけ女子マネがいるからってそんなのやめてくれって言ったんだけどね...。」


宮城が肩を落としてそう言うと彩子となまえは楽しそうに笑い合った。


「いいじゃない、そんなレベルの高いところに混ぜてもらえるなんて光栄だわ。」
『そうだよリョータ!私も嬉しいしすごい楽しみっ!』


....そんな、馬鹿な....。


彩子が他の男どもと話をしている姿を想像するだけで拳を握りしめてしまう宮城はひどく落胆した。なぜだ。なぜうちのマネージャーを招集するんだ...と。そんな思いは目の前の2人には届いておらず神奈川を代表する男たちが集まる舞台に呼ばれたことをとても喜んでいた。


「いいなぁー彩子さんなまえさんは....!」
「来年があるじゃない、晴子ちゃんには!」
『そうだよ〜先に行って色々教えてあげるから!』


先輩たちを羨ましく思った晴子は2人に「約束ですよ〜」と言いながら口を尖らせた。そんな姿を見て桜木は可愛いなぁ、と頬を緩ませたが途端に海南の野猿や他校の選手が晴子と話している姿を想像しては震えが止まらなくなったのだ。


「リョーちんいいのか!彩子さんを国体なんぞに連れてっても....!」
「仕方ねーだろ、俺が目ぇ見開いてずっと見守ってるしかねーよ....」
「る、流川!テメーは!いいのかよ!なまえさんきっと他所でも人気者だぞ?!」


そんなことを言われて流川は「んなことテメーに言われなくてもわかってんだどあほう」と心の中で思うだけにして口には出さなかった。チッと舌打ちすれば桜木は相変わらず晴子が呼ばれたわけでもないのに慌てていた。
















「今日から十日間の合宿を行う。監督の田岡だ。よろしく。」


国体は大会前にチームワークを良くするための合宿が行われた。指揮を執るのは陵南の田岡で他にコーチなどはいない。


一通り自己紹介が行われた後、選手だけで日程の確認などがありキャプテンは海南の牧、副キャプテンは翔陽の藤真と赤木に決まったのだった。そこで副キャプテンの藤真は田岡監督の下でコーチのような立ち位置で監督の経験を生かし指導にも加わることを告げ、マネージャー2人に向かって口を開いた。


「マネージャーだけど、2人にはそれぞれ役割がある。」


そう言うと藤真は彩子の方を向いた。


「主に選手の体調管理や裏方の仕事を頼む。」
「はい。」


彩子の返事を聞くと今度はなまえの方を向く。


「みょうじ」
『あ、はい...!』
「君には田岡監督と俺の元で働いてもらう。監督はひとりでやることも多くて大変だから一緒にサポートしよう。どちらかといえばスタッフ側だ。」
『わ、わかりました...!』


藤真はそう言うとなまえに近寄りプリントを手渡した。


「目を通しておいてほしい。」
『はい...!』
「それと夜8時から監督とミーティングがある。会議室の場所はわかるか?」
『あ、いえ....わかんないです....』
「なら20分前に部屋まで迎えに行くよ。筆記用具とメモできるものを持ってくるように。」


なまえが返事をすれば藤真はニコッと笑い「よろしくな」と言った。その後、牧が色々と話を始めたのだがそんな姿を見て流川の頭はモヤモヤしたものでいっぱいであった。



なんでなまえがフジマなんかと...........



そもそもを振り返れば富ヶ丘中時代からなまえはモテた。そんな彼女に例外なく自分自身も惚れたわけだけど。流川楓の彼女だといくらなまえが有名になろうとやはり変わらず彼女はモテた。告白してくる男なんぞいなかったとは思うが男が憧れの眼差しでなまえを見つめていることに流川は気付いていたし、中学の卒業式に卒業式くらいいいだろうと男たちがこぞってなまえの制服のブレザーのボタンをもらいに行っていたのを流川は知っている。


湘北に入ったってどれほど見せつけたって親衛隊が騒いだってなまえはやっぱり可愛い故にモテる。 それはもう逃れられない。けれども自分の彼女だからと他の男と接触がないよう守ってきたのに、今回ばかりはそうはいかなそうだ。自分の知らないところで藤真という男との接点が増え、この10日間、自分よりも藤真と過ごす時間の方が断然長いのだろう。それを考えると流川はなんともいえない気持ちでいっぱいであった。









「センパイ」
『あー楓さんどうしたの?』


片手にノートと筆箱を持ったなまえが部屋の前で立っている。明らか藤真の到着を待っているのだろう。途端に心の中がモヤッとした流川はなまえに向かって手を伸ばすも後ろから聞こえた声にその手を下げずにいられなかった。


「お、流川」
「......うす」
「ごめんみょうじ、待たせたかな」
『いえ、全然待ってないですよ!』


これは仕事だ。なまえの性格上、やるべきことはどんな状況であれきっちりやり遂げる。それを誰よりも知っている流川はなまえが藤真に向けたその笑顔も仕事のうちだとわかってはいる。けれども他の男の隣で並んで歩いていく彼女を見るのはとてもじゃないがいい気分ではない。


「........チッ」
「おー流川は大変だなー!」
「うるせーです」
「マジで他の男にとられねーようにな」


からかうようにやってきたのは三井で、普段見たことのないような切なげな目でなまえの後ろ姿を見つめる流川にそう言った。ふいっと顔をそらしどこかへ歩いていく流川。んなこと言われなくてもわかってんだよと流川は心の中で叫ぶ。


フラフラと歩きたどり着いた大広間ではお風呂上がりの選手たちがたむろっており、たまたまそこを通ったであろう藤真となまえについて清田が口を開いている最中であった。


「マジであの人が流川の彼女だとか抜きにしてですよ」


清田はそう前置きして再び口を開く。


「藤真と並んだ姿が本気で似合っててビックリしました。藤真みたいな綺麗な顔の隣にはやっぱりあれくらい美人じゃないと釣り合わないんすね...なんか次元が違ったんすよ!」


隣の神にそう必死に言う清田のセリフを一部始終聞いていた流川。彼が悪気があって言っているわけではなくただ思ったことを素直に言う性格だということはわかっているがそんなことを言われてしまっては余計面白くない。


「......チッ、」


舌打ちが止まらないまま流川は自室へと戻った。








次の日もその次の日も、時が経つにつれて流川のイライラは募っていった。無理もない。


「みょうじ、今の試合シュート成功率どうだった?」
『三井さんが一番良かったですね。今日は神くんは少し不調気味かな。』
「そうか。俺仙道をPGで使いたかったんだけどなぁ.....」
『だと思いました。藤真さんの考え見え見えですよ。』


藤真が「さすがみょうじだな」と笑いかければ「わかりやすいです」と笑い返すなまえ。練習後や昼休憩の間にも二人は戦術や練習メニューについて会話を交わすことが多く日に日に距離が縮まっているように見えた。


それ以外にも昨日は海南の神がなまえの手から荷物を取り上げて持ってあげていたのも見てしまったし、仙道が「なまえちゃん」と呼び話しかけていたのも見てしまった。同じ学年だからか陵南の福田や越野とも仲良く話している姿を見かけたし特に神とは気が合うようで、気を許した相手に見せる笑顔でなまえは笑っていた。


その全てが流川には刺激が強く、イライラの原因にしかならなかった。


実を言うと神とも仙道とも、なまえは流川の話ばかりしており、男たちがこぞって「流川はなまえちゃんの前だとどんな感じなの?」と興味を示しそれになまえが「やっぱり変わらず負けず嫌いだよー少し子供っぽいところもあるよー」なんて答えておりそれで盛り上がっていたのだが。やはりあの流川の彼女となるとどんな子なのか、流川自身は彼女の前だとどうなのか、気になってしまうのが本心だ。


そんなこと露知らずの流川はとうとう怒りが積もりに積もって次なまえと二人きりになれたらその場で即襲ってやろうと誓っていたのだ。







その瞬間は突然やってきた。
練習後に藤真に用があって選手の泊まっている部屋のフロアへとやってきたなまえ。流川は清田と桜木の1年3人で使っている自室の前で彼女を見つけるとすぐさま部屋の中へと連れ込んだ。


『楓さんっ......?』


乱暴に扉を閉め鍵をかける。清田と桜木はなんだかんだ仲が良く二人揃ってお風呂に出かけたばかりだ。


『.....これはお仕事だし、国体のマネージャーとしての任務を果たさないといけないんだけどね.....、』


なまえは気付いていた。流川の表情ひとつで今何をしようとしているのかもわかっている。


やっぱり彼女は大人だった。そんな流川に付き合おうと目の前で無表情で自分を見つめる流川の頭を二回優しく撫でると自分から唇を重ねたのだ。


「.....っ!!」


何かを口にする前に意図を汲み取ってくれるやっぱり大人ななまえ。でも流川はもはやそれどころではない。ずっと我慢してきた上に彼女の方からキスされてはもう歯止めが効かないのだ。


『楓さっ、.....!』


乱暴に自分が寝ているベッドへと押し倒せば慣れた手つきでなまえの服を脱がしていく。


『楓っ、.....さすがにこれはまずいよ....!桜木たち帰ってくるかもしれないし、楓!』
「鍵かけた、だから平気」
『平気じゃな....っ、楓っ!!』


流川は何も聞かんと彼女を無視して首筋に歯を立てた。


『痛.....楓っ!』
「無理だ」
『落ち着いて、今合宿中だよ?』
「だから無理だっつってんだろ」


激しく乱暴に、息をする暇もないくらい忙しくなまえを抱いた。しばらくして部屋に戻ってきた桜木と清田は当然鍵のかかった部屋に疑問を感じ、中に誰かいるのかと耳を扉に当てる。微かに聞こえてくる激しい音やなまえの甲高く色気のある呼吸や声に中で何をしているのか瞬時にわかってしまい、顔を真っ赤に染めながら廊下を走っていったのだった。










神さん神さん神さん!!!!助けて!!!!


(どうしたのノブ)
(ここはラブホテルじゃないっすよー!!)
(は?何恥ずかしいこと言ってんの?)







Modoru Susumu
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -