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「夢」と聞かれても答えられない。


「勉強出来るんだから、国立大にしておきなさい。」
『何学部?やりたいことないからお金の無駄だよ。』
「学歴の為にお金出すのよ。なまえ、せっかく成績いいのに...」


永遠と続くお母さんの「とりあえずいい大学に入れ論」がうざったくて仕方がない。何それ?やりたいこともないのに大学生になるの?私それなら就職してお金稼ぎたいけど.......。


結局拉致が開かなくて進路希望の紙には国立大の名前を書いておいた。いや、別に行く理由ないけど....。


流川くんの夢が叶うことを願いたいけど、もしかしたらもうすぐ会えなくなるのかもしれないと思うととっても悲しくて、なんとも言えない気持ちになる。沢北さんも高2の夏に行ったらしいし、卒業まで待つとかそんなのは関係ないのかもしれない。そのまま流川くんに会えなかったら?もう二度と会う日なんて来なかったら...。後悔しか残らないよ.......。


でも、仮に気持ち伝えて、両想いにでもなったとして、そしたらどうするの?

アメリカに行ってしまう流川くんを、ひとりで見送るの?それは...無理だよ、無理!そんなの寂しすぎるよ......。いくらなんでも、彼女になれても、そんなの寂しすぎて...。


「なまえ、あんまり悩むなピョン。」
『だって〜.......』
「恋愛なんてしなくていいピョン。進路はそのうち決まる、安心しろピョン。」
『無理だよ、深津〜〜。』
「取り乱すと名字が名前で呼び捨てにするのやめろピョン。」










「お、随分元気ねーな?どうした?」
『おはよ水戸くん...従兄弟が遊び来ててうるさくてさぁ。』
「おーそりゃ大変だったな。ガキの面倒は疲れんだよなー。」


水戸くんは何故だか深津一成をガキと決めつけてきた。ま、ガキでいいけど。遊びに来る従兄弟なんて確かに小さい子のイメージだよね、うん。









「この問題、みょうじ。」
『.......』
「みょうじー、おーい!」
『...っ、は!はい!』


お前どうしたんだー?なんて先生が笑ってくる。慌てて水戸くんに問題を教えてもらい答えを出せば先生は笑いながら正解ーと言ってくれた。その時少しだけ前の方の席から視線を感じて、ほんの一瞬、流川くんと目が合ってしまった。


う............。


ジッと見てくるから急いでそらす。


「よっぽど疲れてんだなーなまえちゃん。従兄弟まだ家にいんの?」
『今日も泊まって明日帰るって......。』
「あちゃー。そりゃ困ったね、」


俺が相手してやろーかー?なんて言ってくれるの嬉しいんだけど深津一成は19歳なのです、水戸くん。


なんとなくぼやぼや1日を過ごして私は思った。このまま、全て何もなかったことにしてしまおう、と。


だってこんな終わりの見えた恋、つらいだけじゃん。いつかいなくなるよ。追いかけて、追いかけて、振られるなら諦めつくけど、もし成功して実ったら?彼女になったら?その先どうするの?一緒にアメリカに行くなんてそんなこと出来ないし、かといって待っていられるのかって言われたら...現実問題、厳しいよ。。

それならいっそ、なかったことにしてしまおう。今ならまだ間に合う。好きだけど、大好きだけど、全部無し。このまま席も遠くて話もしなければ、これ以上距離が縮むこともないし、前みたいにドキドキしたり振り回されたりなんてことも...なくなるわけじゃん。それは寂しいけどでも今後のことを考えれば、それが一番.......


『...なんの涙だよ〜.......。』


放課後、誰もいない教室でポロリと涙が溢れた。流川くんが好き。でも、そんな勇気もない。そもそも進路が何も決まっていない私と明確な夢や目標を持った流川くんじゃレベルが違いすぎる。住む世界が違うし、こんなぼんやりと毎日過ごす私と比べて、流川くんは毎日一生懸命、バスケや自分と向き合って生活しているんだ。釣り合うわけがない。















もうやめよう。


もうやめようって、思ってたのに。








「みょうじ」
『...........な、なんで......?!』
「何で泣いてんだ」


どうして、流川くんがいるの.......?


『...やだ、来ないで...。』


そうやって、優しくしないで。
私はもう、流川くんのこと........


「...俺のこと嫌い?」


流川くんは水戸くんの席に座ると静かにそう聞いてきた。よく見たら学ランの下のワイシャツのボタンがいつもより多く開いていて少しだけセクシーだ。なんだか身のこなしがいつもより雑で...慌てて着替えてきた?もう部活が終わるくらいの時間かぁ...。


『...嫌い、じゃない...。』
「...来い」


何故だか私は腕を引っ張られあれよあれよと連れていかれる。たどり着いた先は体育館で、先ほどまでいたはずの主はもういない。


無理矢理手から鞄を取られ、流川くんの荷物の隣へと置かれた。空いた私の両手には流川くんからバスケットボールが飛んできた。


『えっ?』
「シュート」
『いやいや、私バスケしたことないし...。』
「大丈夫、上手いだろ」
『それは従兄弟だから...!』
「同じ血流れてる、ほら」


渋々手を上げてその場からボールを放れば綺麗な弧を描いてリングにあたらずそのままシュッとシュートが決まった。


『うわぁ....入った.......!』
「ほら、言った通り」


流川くんは歩いてボールを拾いに行ってくれる。なんだか悪いなぁ、と思ったもののそのまま私へと近づいてきて、今度はスリーポイントのラインへと立つ。後ろから抱きしめられるようにして腕を掴まれフォームを教えてくれる。いやいや...何、何なのこれは........!


「こうして、行くぞ」
『......わぁっ!入ったー!』


まさか入るとは思わなくて喜びながら後ろを振り向けばすぐ近くに笑った流川くんがいて。我に返って黙りこめばそのままフワッと包まれた。


えっ.......?!


「...好きだ」













『る、流川くん...』
「ずっと、好きだった」


ギュッと力を強められて、流川くんの匂いで頭がいっぱいになる。


う、嘘でしょ......?!


ついさっきまで、流川くんのことを諦めるとか好きでいるのをやめるとか、そんなことたくさん考えていたのに、それなのに、........


爆発してしまいそうなくらい嬉しくて、幸せで、涙が出てきて、それは嬉し涙で......。これからのこととか、流川くんの夢とか、アメリカとか、そんなこともうどうでもよくて。自然と私の腕は流川くんの背中へと回って。


「元気がねーなら俺が笑わせる」
『..........っ、』
「みょうじも同じ気持ちなら嬉しい」


何それ、ずるいよ。

わかりきってるんでしょ、そんなの。


『私も、......大好き。』









ゆっくりと唇が重なった。
幸せでどうにかなってしまいそうだった。













まさかそれを、見ている人がいるなんて思わずに。














流川くんの気持ちを知りました


(...うううっ、恥ずかしい....)
(...可愛い)
(...っ?!や、やめて〜〜〜!!!)








Modoru Susumu
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