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朝普通に登校した。
家出る直前まで「何でそんなにニヤニヤしてるか教えろピョン!昨日まで落ち込んでたピョン!」とアイツがうるさかったけど今日東京へと戻るらしい。カズくんまた今度、次は流川くんを紹介できたらいいなぁ、なんて思ったりもする。


もう少しで教室、といったところで、私は呼び止められた。


「みょうじさん、ちょっと来て。」


なんとなく、見たことあるような感じの子で、あまり使われていないトイレの方へと連れていかれる。何だか不思議に思ったものの素直について行ってしまった。






『あの、何か?』
「昨日、見たんだよね〜放課後の体育館でっ。」


何の話かサッパリで「は?」と出てしまった。それを聞いてキッと睨んでくる。うわっ、何?!こわ.......


「流川くんと、キスなんかしてないよね?!」
『え.......あの、.......』
「マジで何なの?!意味わかんないんだけど。なんでアンタみたいなのが流川くんと....!」


あ、そのことか。なんて納得していたら途端にトイレの扉が全室開いて人が出てくる。えっ...バケツ?!これってドラマやアニメで見るような典型的ないじめじゃ........!


「ほんっとキモいんだよね、消えてくれない?」


バシャッ、、


『........なんで、........』
「は?何?」
『なんでアンタたちに、そんなこと言われなきゃいけないの........』


びしょ濡れの私がそんなこと言ったって何の迫力もないのかもしれない。それでも言わずにいられなくて、口からはスラスラとそんな言葉が出てきてしまう。


『流川くんに選ばれなかったからって、ひがみでしょ。』
「ハァ?!マジでコイツ....!!」
『文句があるなら流川くんに言えばいいじゃない...なんであんな女選ぶのって...そんな勇気、ないくせに.........!!!』


言いつけてやる。とりあえず流川くんに言って...こんな奴らとっととこの学校から追い出して...........、


待って。そんなことして、変な心配させたらダメだよね...。流川くんを巻き込むわけには...。


そう思った私は廊下に飛び出し、とりあえず保健室にでも行こうと行き先を変えた。その時後ろから追いかけてきた女たちに捕まってしまい口元を抑えられる。うっ.....苦しい.......!!


「マジで痛い目見せねーとダメだな、屋上!」
「了解!もしもしー?暇なら来てくんない?いい女いるんだけど!」


グイグイ引っ張られ連れていかれてしまう。必死の抵抗も、女子とはいえこんなに集まれば勝てっこない。びしょ濡れの私は屋上に着いた途端放り投げられ、柵の方へと追いやられた。


「流川くんの前に二度と立てない体にしてやる。」
『.......意味わかんない......だから選ばれないんだよ.......』
「マジでこの女!!!!おっ、いいとこに来た!」


その言葉の後、ニヤニヤした男が近づいて来る。全部で3人。かなり体も大きくて、なにせ気持ち悪い。全体的に、なんかもう........不快だ.......。


「何ー?この女いいの?もったいねー、いい女だな」
「うっわ、美人じゃん。マジかよ、サンキュー!」


好きにしていいから、もう。なんてそんな捨て台詞を残して多分流川楓親衛隊と思われる女たちは屋上を出て行った。残されたびしょ濡れの私、と男3人。..............これは相当まずい。。



『やめて、ください...!』
「無理無理。可愛いもん。楽しいよ、気持ちいいしね。」


濡れた服をニヤニヤしながら上から下まで見てくる。やばい.......嫌だ.......助けて..........!!


男の手が私へと伸びて肩を抱かれ、そっと顎を持ち上げられる。嫌だ、嫌だぁ!!助けて、流川くん!!











「...ったく、ふざけんのも大概にしろ...。」


グッと目を閉じた時、何故だか男たちは3人揃って吹っ飛んでしまい、目を開けた時には地面に倒れ込んでいた。


えっ........、


『み、水戸くん.......っ!』
「ほらこれ着ろ。もう大丈夫。」


怖かったな、と頭を撫でられて私は色々な感情が溢れて抱きついてしまった。


「おっ.......、よしよし、頑張ったな...。」
『水戸くん.......ありがとう........っ、』


着替えねーとまずいから行こう、なんて肩を抱かれて屋上をさっさと後にする。水戸くんに吹き飛ばされた男たちはピクリとも動かなかった。




保健室に向かう途中、終始無言の私たちだけど水戸くんは絶対に肩を離さず抱いたままでいてくれた。階段を下りたところで「みょうじ!」なんて大きな声で名前を呼ばれる。


「みょうじ...!」


流川くん.........。
流川くん、息あがってる。走って探してくれたのかな。なんかもう、どんな顔して流川くんを見ればいいのか...。


そんな時、流川くんの手が私に伸びてきて、、


「みょうじ、」
『嫌ぁっ!!!やめて!!!!!』
「..........みょうじ.........?」


その手が、、どうしてもさっきの男と重なってしまって。咄嗟によけて叩いてしまった。


『......あ............、』


どうしよう。流川くんが戸惑った顔で見てくる...。どうしよう、そういうわけじゃなくて、あの、.......


「なまえちゃん今混乱してるから。まず先に着替えねーと。」


どうしたらいいかわからないでいたら水戸くんがそう言って私を保健室へと連れて行ってくれた。流川くんは廊下に立ち止まったまま追いかけてもこない。



『ど、どうしよう........、』
「いいんだよ、そんな事より風邪引くぞ。」


保健室の先生に事情を説明して水戸くんはまた迎えにくると言って出て行った。






しばらくして戻ってきた水戸くんは「もう二度と同じことが起きないようにしてきてから」とだけ言ってきた。それを詳しく聞こうとは思わない。頷けばまた優しく頭を撫でてくれた。


「今日はもう帰る?」
『...うん、帰る...。』
「俺送るよ、先生に言っておいてください。」


保健室の先生にそう言うと水戸くんは私の鞄を持って家まで送ってくれた。


「明日、朝迎えに来るよ。もし休みでも一応来る。朝起きる理由があれば俺も遅刻しなくて済むし。」
『朝起きる理由なんて、いつもあるじゃん...学校...。』
「それだけじゃ起きれねーから遅刻しちゃうんだろ。」


なまえちゃんの為なら早起き出来るし。なんて笑ってくれて、私は少しだけ安心することができた。














水戸くんの存在がとてもありがたく感じました


(ゆっくり休めよ)
(...また頭撫でてくれた...)










Modoru Susumu
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