■ 翔陽
『だからぁ、今日で彼氏いない歴丸2年なの』
「...そんな理由で俺たちを呼ぶなよ」
『いいでしょ?それに来たのは自分達じゃん』
確かにそうなんだけどな...なまえよ...
目の前で軽く酔っ払いながら笑うなまえは俺たちの代のマネージャーで正直かなりの美人である。当時から藤真と2人でセット扱いされていたしありもしない噂を流されて大変な思いをしていたのも知ってる。隣でビールを飲む高野と永野、そして静かになまえの話を聞いてあげている一志、呆れている俺に加えて1人つまんなそうな顔をしているのが藤真である。
「...大丈夫だ、なまえは綺麗だから」
『やだぁ、一志口上手くなったね〜?』
「俺も大人になったんだよ」
『えぇ〜?一志はそのままでいていいんだよ?』
「...なまえもな」
彼氏が出来ないことを綺麗だから大丈夫で片付ける一志もどうかと思うがその隣のぶしょったい顔した美形男子はどうしたものか。お前の心が手に取るようにわかるよ藤真。昔からなまえに心底惚れていたもんな。勝手なる一方通行だったけど。
「おい花形、お前の心が読めるぞ」
「やめろ藤真、こっちのセリフだ」
そう言い返せばムッとした顔でこっちをにらんでいる。はいはい、一志とばっか話してるからつまんないですよね、俺にどうしろって言うんですか!
「なまえ、もう仙道のことは忘れた方がいい」
『無理だよ一志...あの飄々とした感じがよかったの』
「だからこそ別れる原因になったんだろ」
『うわぁ、図星突いてくるねぇ』
それに話題はずっと元カレの仙道の話。つまんないですね、はいはい。
なまえと仙道は社会人になってから偶然街であったとかなんとかで付き合い始めたらしいが飄々としている仙道にベタ惚れしたなまえと、その重さに耐えられなくなった仙道が逃げる形で終わりを迎えたらしい。そりゃ束縛されるのは悪いことじゃないとは思うがな、あまりにも規制が多いと嫌になってくるもんだ。
「重い女はダメだ」
『だって他の人に取られたくないじゃーん』
「仙道は別になまえのことちゃんと好きだったろ」
『でもさぁ、何考えてるかわかんないんだもん』
「そこが好きになった飄々としてるところなんだろ」
矛盾している考えを的確に指摘する一志に藤真はとうとうイライラした表情を見せ始めた。しっかし一志はよくなまえと仙道の事情を知ってるもんだな。ま、高校時代から何かと一志に相談したりしてるの見てたけどな。まぁ気が合うのかもしれないしわからなくもないが。
「なぁなまえ、お前にはもっと似合う男がいるだろうよ」
『なに藤真急に。今のところ仙道くんがベストだけど』
「...(んぐっ!)」
なっ?!藤真がストレートにダメージ喰らってる...かわいそうに。人の気も知らないでひどい女だ全く...
「ま、俺もそう思うけどな」
『なに一志まで、そんな人いたら連れてきてよ』
ハァーなんてため息ついて目の前のサワーを飲むなまえ。ダメージを喰らい泣きそうな顔をしていた藤真がおもむろに立ち上がるとギッとなまえを見下ろして口を開いた。
「馬鹿野郎!昔から隣にいるだろーが!」
『...ビックリした!何?!』
「俺がいるだろ!いつもお前の隣にこの俺が!」
あんぐり口を開けたのはきっと俺だけじゃない。この男ついに言った...しかもこんな酒の席でこんな大声で...恥ずかしい、けど男前な藤真が言えばなんかそれっぽく聞こえてくる。うんやっぱ顔がいいってのは得だな。
『何言ってるの藤真...』
「ずっと好きだったんだよ!気付けよ!」
『...?!』
「いつだって俺となまえは世界一お似合いだろうが!」
な、何という告白...
「仙道なんか全然敵じゃねーよ」
『藤真...』
「俺と結婚しろ!世界一幸せにしてやる」
藤真ついに告白したと思ったらいきなりプロポーズか!なんという男なんだお前は...高校時代だっていくらでも告白するチャンスあったくせに全部ダメにしてきて...社会人5年目にしてやっとかと思えば...おいおい大丈夫かよ...順番めちゃくちゃだ。
『なにそれ...』
小さく呟かれた呆れた声にやっぱりダメだったか、と満場一致でそう思ったその時
『最高じゃん、結婚する!』
「...ハ?」
『確かにいつだって隣にいた、これからもそうする』
「え?いや、あの、俺、自分で言っといてなんだけど...いいのかよ?」
『藤真!結婚しよう!!』
何がどうなっているのかサッパリわかりません
(おめでとう?でいいのか?)
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