■ A





『三井さん就職丸2年おめでとうございまーす』
「...あのなぁ、祝うことじゃねぇだろマジで」

大学4年になったなまえから突然連絡が来てサシで飲むなんて流川に怒られねぇかなと思いながらも内心どこか嬉しい自分がいて来てみたら既にベロンベロンだしなんだよコイツ...人の気も知らねーでよ。

つーか就職して2年の祝いって意味わかんねぇけど。それ以上に内心嬉しいと思ってる自分が1番意味わかんねぇよ俺はバカだなほんっとうに。

『いやいや、あの三井さんが就職ですよ?すごい!』
「俺のことなんだと思ってんだお前...」
『よかったなぁ、バスケ部に戻って全部が元通りになったぁ』

元通りじゃない、それ以上ですよ〜なんて言われて酔っ払いの言葉なのになぜか嬉しく思っている自分がいて本当に嫌になる。あのなぁ俺!言っとくけどコイツ流川の彼女だぞ?それとこんなにベロンベロンなんだよよく見ろよ!いちいち惑わされんじゃねーよ!社会人だろ!

「...そりゃありがとな、で?流川はどこにいんだ?」
『どこですかねぇ、ロサンゼルス?ニューヨーク?』

もしかしたらハリウッドかなぁ、なんて笑いながら言い出してようやく気付いた。そうか、アイツ今アメリカ行ってんだった。宮城がギャーギャー騒いでたのすっかり忘れてたな。あれ去年だったか?その前の年だったか?もう随分とアメリカに行ってるのは間違いなさそうだな...あ、なるほどな。ヤケになってるわけか。

「寂しいんだな?」
『いやいや、いいんですよぉ、流川くんは元々日本には似合わない逸材でェ...』
「どんくらい会ってねぇの?」
『一昨日会いましたよぉ、私帰国直後ですよぉ』

...ハ?
一昨日?んだよ順調に交際続けてますアピールかよ?!んな惚気に付き合ってる暇はねぇんだこっちは。無駄に傷口えぐるな馬鹿野郎。さっさと家に帰れこの酔っ払い!なんて言えるわけねぇけどそんなこと思ってたら急に声のトーンが下がったから驚いた。

『...別れようかなぁって思ってるんです』
「...は?!順調じゃねぇのかよ?」
『順調?そんなわけないですよ、もう限界です』

そう言うとなまえはポロポロ泣き始めた。あぁ、これじゃ俺が泣かせたみてーじゃねーかよ...もう、全く女泣かせてんじゃねぇよ流川の野郎...机に伏せて泣いてるなまえはいつか見た時と同じように首筋に赤い跡があった。んだよアイツキスマーク常習犯だなムカツク...つーか、こんなことしておきながら別れるなんて何があったのか...聞かない方がいいんだろうか...

「あー泣き止め、大丈夫だからな」
『ありがとうございます...アメリカ遠いです』
「まぁ違う国だからな、仕方ねぇよ」
『距離だけじゃないです、流川くんの心も遠い場所にあります』

心...か。
なぜか妙に突き刺さるその言葉に胸がグッと掴まれたような感覚に陥った。ふぅん、会ったら余計つらくなったとかそんな感じかよ、全く...手間のかかる奴だなほんっとに。

『いや、この話はよくて、三井さん就職おめでとうございますってことですよぉ』
「......もう何も言わねぇよ俺は」

んだよコイツほんっとうになにが話したいんだか...とりあえずビールを飲み干せばなまえは顔を上げてチマチマカシスオレンジを飲み始めた。これ以上酔っ払ってどうするつもりだか...ハァ。

「あんま飲むなよ、明日つらくなるぞ」
『いいんですよ〜三井さんの就職祝いですから』
「俺就職したの去年だからな」
『あぁ間違えた2年だぁ!まさか仕事続くと思わなかったから』
「...お前マジで俺のことなんだと?」
『炎の男でしょ〜ハハハ懐かしいっ』

シクシク泣いたりケラケラ笑ったり忙しいなほんっと。これだから見てて飽きないし一緒にいると楽しいとか思っちまうんだよな、しっかしなぁ...弱いとこに漬け込むことだって出来るわけだけど、なにせ今はお互い酔ってるしそんな流れもアリだけど、まぁまだ流川の彼女なわけだし大体俺がそんなこと自分で許すと思ってんのかよ...あ、でもまぁ、無しではないかもな。コイツマジで可愛いしな。ますます綺麗になってる感あるし、どれもこれも流川の仕業かよ...

『戻りたいなぁ、高校生...』
「んだよ急に、無い物ねだりかよ」
『社会人は楽しいですか?就活やめたいです』
「いっそのことアメリカで就職しろ流川の嫁ってことで」

何気なく言ったんだよ。元気出るかなって。まさか本気にするなんて思わねぇだろ?な?おかしいんだって。













新聞にデカデカと載った流川楓選手結婚の文字

(別れさせることだってできたのに...)
(背中押して協力しちまった...)
(...俺のせいじゃねぇかよ!!!!!)







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