■ 湘北




『さてさて、おめでたい今日という日に乾杯!』
「カンパーイ!」
「...ちなみになんの記念日だよ」

久しぶりに宮城から集合がかかりとりあえず大学終わりに顔出せばファミレスに集合していた懐かしい顔ぶれ。同じ大学に入ってきた宮城に加え、高校最後の夏、インターハイ予選を控えた流川、桜木、そしてマネージャーのなまえがいた。

『覚えてないんですか?せっかく集まったのに』
「なんのことだかサッパリ...」
「ミッチーの為に集まったってのによ!」

桜木が口を尖らせてそう言うもんだから俺は余計頭が混乱した。は?この集まり俺の為ってわけかよ?俺なんかしたか...?

『三井さんが湘北バスケ部に復帰して今日で丸2年です』
「...ハァ?」

自信満々にそう言うなまえに思わず間抜けな声が出た。なんだよそれ確かにバスケ部襲撃したのも復帰したのもこの時期だった気はするけど...わざわざ集まって祝うことかよ?!

「なんだよそんなの祝うことじゃねーだろ!」
『何言ってるんですか〜あの日の三井さんを忘れちゃいけないですよ』
「俺らは殴られたから忘れたいけどねー」
「お前だって俺のこと殴っただろ!」

宮城が冷やかしの目でジトッと睨んでくるから腹が立つ。つか、去年はこんな会なかっただろうが。なぜ2周年目で開催されたんだよ意味わかんねーなほんっとに。

『てことで大学生三井さんの奢りで!もう一度乾杯!』
「何言ってんだよ割り勘だろ!勝手に決めんな!」

えーケチーとかなんとか聞こえてくるがそんなのは無視無視。俺だって奢ってやりたい気は少しくらいあるけどな、大学でもバスケ漬けで忙しいんだよバイトもしてねぇし...毎日生きる為に必死なくらい金欠なんだ。ヘッ。

「つか三井サン、マジで今日という日に感謝しましょうよ」
「んだよ宮城、意味わかんねぇこと言うな」
「だってアンタあの日バスケ部に戻ってなかったら今頃...」

んぐっ、確かに...俺そうなってたら今頃何してたんだろうな。鉄男と竜とつるんで未だにバスケに未練タラタラなロン毛男だったかと思うと...ヤベェ身震い止まんねぇ...

「...その話はやめろ」
『ね!ほらおめでたいでしょう?!さぁ、奢りなさい』
「...わーったよ、好きなだけ食え」
『やったぁー!太っ腹ー!』

わぁと盛り上がってメニューを広げるなまえを見てにやけそうになる顔を必死に阻止した。コイツ、少し色っぽくなったな...そりゃ俺がいた頃まだ1年だったしこの2年の間に女としてどんどん成長してきたってのはわかるけど、にしてもなんか艶っぽいな、まぁ高3だもんな、それくらい普通か...

コイツ、彼氏とかいんのかな。つーかすげぇ久しぶりに会ったけどいつ以来だ?前会った時は彼氏できないとかなんとか嘆いてなかったか?そん時も俺コイツがフリーだってことに安心してたような...アレ、なんだこれ。俺これじゃあコイツのこと好きみたいじゃんかよ...?

(ないない、可愛い後輩ってとこだろ)

なんつーか、好きとはまた違った感じなんだよな、多分。妹を嫁に出す気分っつーか、彼氏できたらソイツがどんな奴なのかとりあえず見ておきたいような...いい男か見極めてやりたいというか...

「なに変な顔してんすか三井サン」
「...んだよ別に普通だろ」
「いーや、どうせなまえちゃんに見惚れてたんでしょ」
「ったくお前は本当にうるせー奴だな」

変に鋭いからな、コイツ。
なまえを見やれば桜木と眠そうな流川となにを頼むかルンルンで話し合っている。あーでもないこーでもないと話を続けているそのコロコロ変わる表情が見ていて飽きない。なんだかな、変な気分だわ。

「アイツ彼氏いんのかよ?」
「え、知らないんすか?時代遅れだなぁ」
「んだよそれ?!いんのか?」
「いますよ、三井サンの目の前に」

め、目の前...?
パッと前を見やれば眠そうな顔して目をこすってる流川がいるけど...え?!マジで言ってんの?!

「マジで...?」
「ハイ。俺冬に引退して流川がキャプテンになった辺りからっすよ」
「ハァ?!なんだよそれ...」

おい待て全然話が違う。彼氏募集中とかなんとかじゃなかったのかよ?がっつり恋愛してんじゃねぇ高校生の分際で...!しかも、流川だと?!この無愛想で無口な万年寝太郎と?!信じられん...

『今日はとことん三井さんについて語りましょう』
「ミッチーはとにかく歯抜けの男女だ」
『花道それ以外にないの?お世話になったでしょ?』
「いいや、この天才がお世話したんすよなまえさん」
「...どあほうなセンパイ」
『流川くん、今日はどあほう禁止だよ』
「...じゃあ他に言うことねー」
『えぇ...?あぁ寝ようとしないで?』

コイツら勝手にメニューの隅から隅まで頼んでたとか流川が俺をどあほう呼ばわりしてるとかそんなことどうだっていい!なまえがこんな色っぽくなったのも綺麗になったのも全部全部流川が原因ってことか?!女らしくなったなぁとか思ったけど...まさか、あんなことやこんなことも...?!

(マジで言ってんのかよ...信じらんねぇ...)

その時チラッとなまえの首筋が見えた。
着ている制服のワイシャツの隙間から動いた時に少しだけ横にずれて首筋にある目立つ赤い跡...噛み付いたような跡...?!

(ファァァ?!なんだよそれ、流川...!)

『大学では試合出てるんですか?』
「...流川、お前...万年寝太郎の癖に...」
『三井さん?どうしたんですか?』
「どうしたもこうしたもねぇなまえ...!」

キョトンとした顔で俺を見つめるその顔をジッと睨めば隣から刺さるような視線を感じた。る、流川...己...!

「...センパイ」
「んあ?!んだよ流川」
「なまえは俺のもんス」
「...ッ?!?!」

















あぁ認めるよそうだ好きだったんだよ!!

(流川くんなに言ってるの急に!)
(キツネどうしたんだ?んなこと全人類が知ってるだろ)
(...クッソーー覚えてろ流川ーーー!)
(三井サン大人気ねぇなダメだこの人ほんっとに)







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