■ 神





『またダンク決めたし...ほんとカッコいい...』
「なまえいい加減目覚ませって!どこがいいんだか」
『逆に何でわかんないのかな最高にカッコいいじゃん』

まぁ取られるの嫌だからいいけど、なんて言って友達に呆れられてるみょうじなまえを見て俺は心底腹が立った。1年の時から同じクラスで今年もまた同じだと喜んだのもつかの間、彼女は今年入ってきたバスケ部の自称スーパールーキーにあっという間に惚れ込んでいたのだ。

『信長くん本当に彼女いないのかなぁ...』
「見た感じ隠しごと向いてなさそうじゃん?いたらすぐわかるでしょ」
『そうかなぁ...チャンスないかなぁ...?』

入学早々とんでもない美人が入ってきたってバスケ部の先輩たちも騒いでたし同じクラスだった俺も周りと同じようになまえの美しさには度肝を抜かれたわけだ。本当に同い年か?って何度もジロジロ見つめて不思議そうに話しかけられたの今でも覚えてる。

(あれもしかしてバスケ部?)
(あぁ、うん、そうだけど...)
(私バスケ大好きなんだ!練習見に行くね!)

それ以来俺はなぜか”宗ちゃん"と呼ばれるようになり多分学校中の男の中で1番なまえと距離が近いと思う。近いからこそ苦しい思いもたくさんしてきたしなにせ今年からはこの信長のせいで腸が煮えくりかえる思いを何度してきたことが。

「大体なまえに告られて断る男なんていないでしょ」
『何言ってんの無理だよ...』

毎日のようにこうやって練習を覗きに来て最後の最後まで信長をジッと見つめている。本人こそ気付いてないものの他の部員たちはなんとなくその様子に勘づいていて信長にパスを出さないとかそんなこと日常茶飯事だった。

「神さーん、休憩っすよ」
「あぁ、うん、ありがとう」

ほいっとポカリを渡されて素直に受け取れば神さんまた見に来てますねなまえさん、なんて言われて俺はビクッと肩を揺らしたわけだ。

「え、あぁ、そうだね」
「神さんモテますね、流石だ!あんな美人も見にくるなんて」

どうやら俺を見に来てるんだと勘違いしているようだがまぁそれはありがたい勘違いだ。訂正しないでおくよ信長。

「美人と付き合えたら余計バスケにも熱が入るのになぁ」
「そんなこと言ってないで練習練習」
「ハァーイ!」

ニカッと笑ってヘアバンドをグリグリいじっている。その様子を2階から見てキャッキャと騒いでいるなまえ。いちいち信長のやることなすこと全部に反応しているもんだからわっかりやすくて腹が立つ。なんでこいつなんだろうか。俺がいつだって隣にいるのに、なんでこうも報われないかなぁ...

せめて牧さん相手だったらまだ受け入れられそうなのにどうも信長相手だと腑に落ちないんだよなぁ。別に見る目がないとまでは言わないけどなんで?って思わずにいられない。

犬っぽいところとか?小さいのにダンク決めるから?まぁ運動能力の高さで言えば俺はちっとも信長に敵わないし、生まれ持った才能なんて何もないから勝ち目ないんだけどさ。でも、もっとこうなんか、俺にもチャンスが巡ってくればいいんだけどなぁ...




「なまえ、送るよ」
『あ!宗ちゃんお疲れ様〜いいよ、大丈夫だよ』
「いやいや、今日は友達先帰ったの?」
『うん用事があるんだって』
「俺着替えてくるからここで待ってて」

普段なら友達とワイワイ帰ってるのに今日はポツンと1人で練習を見ているもんだから終始気になって仕方なかった。500本は昼休みに終えていたし今日は練習しないでこのまま帰ってしまおう。もちろんなまえを家まで送り届けて...

「おまたせ」
『いいの?宗ちゃん、疲れてない?』
「大丈夫、暗いから1人はダメだよ、行こう」

スリーの練習はいいのかまできちんと聞かれてもう終わったことも答えた。ありがとうと俺の隣を素直に歩き出すその姿にグッと胸が熱くなった。いいなぁ、付き合えたらこんな風に毎日...

『宗ちゃんって本当に優しいよね』
「いやいや普通だと思うけど」
『まさか!本当に優しいし努力家だしいつも尊敬してる』
「ありがとう、なんか照れるなぁ」

信長みたいなこと言うんだなぁ、好きになると似てくるとか?神さん神さーんって駆け寄ってくる姿と宗ちゃん!って話しかけてくる姿がたまに重なって見えることがあってとてつもない悲しみに襲われたりする。

「なまえこれからも毎日送って行ってもいいかな」
『ま、毎日?!そんなぁ悪いよ!』
「そのかわり500本に付き合ってほしい」

もう俺に出来ることはこれくらいしかない。俺のそばに常に信長がいることは回避できない。けど躊躇してる暇もない。やれることやらないと後悔しか残らないなんて俺が1番よくわかってるはずだ。

『いつやるの?帰り?』
「朝は自分でやるから昼休みと練習終わりに少し」
『ええっ、大変だね宗ちゃんそんなにやるんだね』
「待たせないように帰りの分少なくするから」

そのかわり毎日家まできっちり送るよって言えばわかったって了承の返事が返ってきた。別にいい、今は友達でも、優しい宗ちゃんでもなんでも構わない。でも今に見てろ、俺は優しいだけの男じゃない。欲しいものはなんだって手に入れる、それが後輩のものになる予定のものだろうと関係ないさ。




何でもかんでも努力で勝ち取ってみせるよ

(さて次はどうやって距離を縮めようか)







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