■ 南





誰や、誰やねん。南ならイケるとか南ならエースやから大丈夫とかそんなん言うてた奴は。

「みょうじ好きや俺と付き合おう」
『ごめん、南くんタイプとちゃうねん』
「...ハ?」

全然大丈夫ちゃうやんかボケ。普通にあっさり振られたわ。そらな、みょうじは豊玉のマドンナやからそういうパターンもあるってわかっとったけど、でも南ならいける言うたやろみんなして...!!なんでや、なんでこんな仕打ちが...

「土屋か?土屋んこと好きなんか?」
『土屋?もしかして大栄の?無い無い!』
「同じ中学やったやろ?聞いたで中学ん時いい感じやったとか」
『何それどこの噂やねん』

ちゃうんか?もしかしてみょうじは土屋なんぞ眼中になかったけど土屋はみょうじに惚れとったとか?なんやそんなん余計に俺が射止めて自慢してやりたいわ...!

「じゃあなんや、好きな奴おるとか?」
『南くん聞いてへんかったの?』
「...ハ?」

私な、南くんタイプとちゃうねん、再びそう言われ俺は先程のみょうじのセリフを思い出した。確かに言うてたわ、待てよそれってなんか最悪やんな?俺のこと全否定してるやんけ...

「なんやタイプって意味わからへんバスケしてる奴好き言うてたやん」
『バスケは好きやけど...私にも選ぶ権利あるやろ』

バスケしてたら誰でも良いわけやないよってそんなこと言われて確かに...ほんなら岸本にもチャンスあることになってまうもんなとか思ったわけや。

結局全然大丈夫じゃないわけやけど俺かて一応豊玉のエースや。こないなとこで諦めるわけにいかないっちゅうねん...!



**



「はよ、みょうじ」
『あぁ南くんおはよう』
「なんや今日も元気ないやんか」

テストを控えてるもんやから部活もテスト期間や言うて停止になっていてなんやつまらんなぁて毎日過ごしてた。俺はあれ以来積極的にみょうじに話しかけて絡みに行って何故か素直になれへんくておちょくってしまうことが多くてウザがられることも多々あったがそれはそれで楽しかった。

テストが近付くにつれてみょうじはどんよりげんなりどう見ても元気が無くなって沈んでいっている。なんやみょうじって頭ええって有名なはずやけど?

『テスト勉強しんどいねん...』
「何言うてるん自分、めちゃ頭ええやんか」
『それをキープするのが大変やの!』
「あぁわかる気するわ、勝って当たり前の裏側な」

わかるわ。勝って普通や思われてんねんけどそれキープすんのに実際めちゃくちゃ大変やねん。裏でどんだけ努力してると思ってんのやって言いたくなるやつな、わかるで。

『さすがエースやな、南くんも苦労してんねんな』
「まぁそらな。そんなしけた顔せんとシャキッとせえ」

以前みょうじのクラスを覗いた時美味しそうに飲んでたビタミンたっぷりのレモンドリンクをほいっと差し出すとみょうじは途端にパアッと笑顔になって俺の方を見つめてきた。ぐっ...なんや、可愛い...!

『これ貰ってええの?!ありがとう南くん』
「それ飲んで元気出しや、そのままやとブサイクになんで」
『私これめっちゃ好きやねん!』

俺の言葉なんて届いてへんのやろな。とにかくレモン握りしめてニコニコしとるわ。ほんまに可愛いわコイツむかつく...はよ俺のもんになれっちゅうねん...

「みょうじ大学とか決めとんのか?」
『あー多分東京に行くわ』
「ハ?東京?!やめとけやめとけそんな物騒やわ」
『なんやの、南くんに関係あらへんもん』

ムカッときてレモンを取り返せばみょうじは慌てたようにごめんごめんなんて謝ってきた。ヘッ、俺が買ったんやぞそのレモン。感謝せえよ、俺のこと邪険に扱うなや!

「やりたいことでもあるんか?」
『あー...薬科大行きたいねん』
「薬科大?!なんや薬剤師なりたいんか?」
『まぁそんなとこや...そういえば南くん家薬局やったな?』

ほんなら南くんも薬科大行くんかて聞かれたけど俺の学力で薬学部なんか入れるわけないやろ考えろや。ぶんぶん首を振ればそうなんや、なんて言われたけどなんか、俺ら結構良い感じとちゃう?え?俺の勘違いか?せやけど俺と付きおうてくれたら俺ん家薬局やし、なんかプラスになりそうやない?!違う?!

「薬剤師になって俺ん家に就職せえ」
『え?何言うてるん...』
「俺ん家まるまるみょうじにあげるわ、ついでに俺のことも」
『...ハァ?!な、何言うてるの南くんっ...』

突然アワアワ慌て出して顔を真っ赤にしてるもんだから俺はまさかと思って驚いた。そりゃ俺かて恥ずいけどまさかそんな反応されると思わんやろが、なんなん俺のこと好きなんか?!意外にも脈ありでこっちがビックリやわ...

『からかうのも大概にしてや...』
「本気やぞ、南龍生堂も俺のことも貰ってくれ」
『......』
「就職先は俺ん家と俺の奥さん、どうや?」

もうここまで来たら言っちまえ!と思って恥ずかしさを超えて言い切ったわけだが...めちゃくちゃ恥ずかしいやんか何言うてるん俺の馬鹿たれ...!!!

でもあんな反応されたん初めてやったし今しかないと思って攻めたわけやからあっさり断られても多分後悔はせえへんけど...

『...やめてや南くん』
「...悪い、そんな顔させるつもりやなくて」

あまりにも下を向いたままそんなこと言うから少し覗いたら涙目でグッと下唇を噛んでいるみょうじがいた。いや、別に泣かせるつもりやなかったんだけど...

『そうやって土足で踏み込んで来ないでほしいねん』
「...ハ?」
『薬剤師になりたくて必死やのに頭ん中毎日南くんでいっぱいやの』
「...?!?!」
『またそんなこと言って喜ばせてくるやんか。どうしてくれるん、責任とってや...!』

全然タイプとちゃうのになんでなんって怒られたけどそれ俺のことがタイプってことになるんちゃうの?えぇ?!

...どうやら俺の勘は当たっていたらしい。脈ありどころか少しずつみょうじの気持ちを自分に引き寄せていたようだ。なんやねん、マジでにやけ止まらへん。俺かて毎日みょうじのことで頭いっぱいや。

「責任とるよ、みょうじと結婚する」
『...南くんそれほんまに言うてるの』
「もちろん、永久就職や!俺について来い!」

ま、かっこつけて言うてはみたものの南龍生堂はみょうじが継いでくれるかもやし、俺もしっかり仕事見つけんとな...!












南くんのバカ!好き!大好き!

(...ヤバ、俺死ぬんかな)




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