■ A





『ねぇねぇ神くん、質問してもいい?』
「あれなまえさん...どうしたんですか?」
『海南の大学って偏差値どのくらいかなぁ?』

2年になって初めて国体に選ばれて神奈川は優秀な選手が多いから刺激的でいいなぁ勉強になるなぁなんて思って会場を歩いていたら不意に声をかけられた。山王のマネージャーのなまえさんだ。秋田は山王単体で来てるとかそんな感じだった気がする。相変わらずの美人さんだけど、海南大に興味があるのかな?

「もしかして海南大を受けるんですか?」
『うん、まぁ...都会に憧れもあってね...!』
「なるほど!ちなみに学部は...?」

よくよく聞いてみれば神奈川県に憧れもありやりたいこともあり海南大がベストだという結論に至ったらしい。うむ、いい考えだ。こんなに美人が自分とこの大学を希望してるなんて別に関係ないことなのになぜか嬉しくなった。

「なまえさんなら受かりますよ大丈夫」
『いやぁ...神くんほど頭良くないよ』
「え?なんでそんなことを...」
『牧くんが前に言ってたよ神くんなんでも出来るって』

褒められてバレないようにではあるがめちゃくちゃ喜んでたのは俺です。なんとまぁ牧さんいいこと吹き込んでくれるじゃないですか、とか考えてたらいきなりなまえさんが俺の腕を掴んだまま背中にひょっと隠れたわけだ。なに?どうしたんだ?

『ごごごめん!隠れさせて!』
「え?どうしたんですか?」
『怖いの...ごめんじっとしてて!』

俺の背中に自分の背中をピッタリとくっつけてくるから不覚にもドキドキが止まらない...体温が...不謹慎にもそんなことを考えていると前から柄の悪そうな2人組が歩いてきてなんとなく合点がいった。

「確かここら辺で見たんやけどなぁ」
「やめとけ岸本、インハイん時も逃げられたやろ」
「だからこそラストチャンスや謝りたいだけやんか」

美人マネーなんて呼ばれてあぁこの人たちを避けてるわけだと納得した。なんとなく理由がわかる気もする、うん。

「あ、海南の神...山王のマネージャー見んかった?」
「えっと、見てませんけど...」
「おかしいなぁさっきここらで見つけたんやけど...」

とりあえずシラッと答えておけば背中をトンと押された。ありがとうという意味だろうか。

「岸本戻ろうや、俺もう合わせる顔ないで」
「そらなお前は今年も肘鉄やっとったもんな」
「うるさいなぁ、大体あんな美人が俺らなんか相手にするかい」
「やってみなわからんやろが!」

へえ...と思って2人のやりとりを聞いていたら不意に後ろから大きな声が聞こえて俺は絶望したわけだよ。うん。

『...ヘックシュン!』
「あ?!今...あぁ神の後ろにおったぞ!」
「なんや...隠れとったんかい...」

ちょっとなんてタイミングだよなまえさん。後ろを覗かれてまんまとバレたわけだ。あぁ、俺の努力...

『ヒェェェ...なっ、なんですか本当に!』
「今年の夏俺らのこと避けたやろ!」
『だって!卑怯だし怖いし...人のこと悪く言うし...』
「おら南、言われてんで」
「お前もや岸本」

ガーガー言い合ってる3人の間に挟まれて俺は肩身の狭い思いをしているわけだ。なんだよ他所でやってくれ...

「謝りに来たんや、いつかは仲間のこと悪く言うたな悪かった」

あんの、なんやったか、イチノ?と岸本さんが聞くとなまえさんはコクコク頷いてジッと睨み返していた。なに?一之倉さんのこと悪く言われたんだ?それで怒ったんだな?うーん...一之倉さんねぇ...

『イチノのこと悪く言うなんて本当に許せない』
「悪かった言うてるやんか...」
『それに今年は流川くんもやられちゃったし』
「...(ギクッ)」

明らかショックな顔をしている南さん。こりゃダメージ食らったな、うん。美人は幸せを与えてくれるけど逆に与えるダメージも大きいなぁ...

『怖いです、2人とも...』
「怖ないよ、南は別としても俺は普通の関西人や」
「バカお前の方が柄悪いやろが」
「ハァ?姑息な真似してお前の方が極悪やわ」

また豊玉の2人がガミガミ言い合ってるとなまえさんは遠くに何かを見つけてパッと顔を明るくさせた。おぉ?なんだその反応は...それじゃあまるで...

『イチノ!』
「なんやまたイチノかいな」

トコトコ走って行こうとしたその腕を岸本さんがグッと掴んだ。ビックリした顔で後ろを振り向いている。

『なっ?!なに...?!』
「なまえ言うたか?なまえイチノのこと好きなんか?」
『えっ、えぇっ?!あ、いやその...』

なっ、なんですかそのバレバレな反応は!ーーー
顔を真っ赤にして違うよ違うよ!なんて手をブンブン振ってるけどそんなんまるで大好きだって言ってるようなもんじゃん...うぇぇ?!なまえさんって一之倉さんのこと好きだったのか...そりゃまぁ話聞いてたら一之倉さんのために怒ったりしてたみたいだしなんとなく特別仲良しなのかなとは思ってたけどあからさまにそんな反応されちゃうとこっちまで照れますよ...!えぇ、一之倉さんいいなぁ...

「マジなん?!あんなチビ坊主のどこがええん!」
『...あんなチビ坊主?』
「...バカ岸本!!」

南さんがドカッと岸本さんの頭を叩いたけど時すでに遅し。なまえさんは拳を握りしめてふるふる震えながら岸本さんをキッと睨んだ。

『もうほんっとうに!豊玉なんか大っ嫌い!』

そう叫んで一之倉さんの元へと走っていった。呆気にとられた俺ら3人、会話もないままひたすら遠くに歩く2人を見つめていた...








まさかとは思ったけど本当に惚れてんのかいな..

(嘘やんあんなんのどこがええんや)
(おまっ、岸本少しは反省せえよ)
(お前が選ばれんとこはそういうとこや)
(...人のこと言えるんかエースキラー)





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