■ 豊玉





「なんや超絶べっぴんさんやんけ」
「は...ホンマや」

インハイで会場内を歩いとったら突然岸本が立ち止まってそんなこと言うてるからどれどれどこやと俺も確認してみたら...なんやあの美人は!確かに超絶美人やわ。

「なぁなぁ、どこかのマネージャーか?」
『えっ...ッ!!!』

岸本に声かけられてビクッと肩を揺らした後隣の俺と目が合うとあからさまにこちらを警戒し始めたその美人。若干肩が震えてる気ぃするけど、なんや、もしかして俺のせいか?...あ、昨日のイケメンに肘鉄くらわせたん見とったとか?!

『あ、あの...何か?』
「なぁ南めちゃくちゃ怖がられてんで俺ら」
「...しゃあないやろそら怖いやろが」

こんな見た目に関西弁しかも相手のエース退場させてたそれも肘鉄でなんて条件揃ったらそりゃ美人やなくても警戒するわ正常な反応や。岸本は面白くなさそうに美人にグッと詰め寄ると怖ないでなんて説得しとるけどそら余計怖いわ逆効果や。

「あ、もしかして昨日の退場させたやつか?」
「余計なこと言うなや岸本」
「大丈夫、コイツほんまは小心者やねん」
「誰がや、お前ええ加減にせぇこのチョンマゲ」
「なんやて?南なんぞちっとも怖ないわ!」

ガミガミ言い合う俺らを見て余計に肩をガクガクさせた美人は遠くに歩いている男を見つけるとハッとして大きな声でソイツを呼んだわけや。なんやあんな小さくて丸坊主がチームメイトかいな?ったく貧弱な...今時坊主なんて流行らへんわ。

『イッ、イチノ...!』
「あっなまえ...?!」

遠くから呼ばれてこっちを向いたイチノと呼ばれた男は瞬時に状況を判断したのかダッシュで俺らのとこへ駆けてきたわけや。なんや足速いなぁ...

「何してるんだよ」
『イチノ...』

着いた途端にササッと自分の後ろに美人を隠して俺らから見えないようにしたそのイチノ。なんやスマートにイケメンみたいなことしよって...イチノよりほんの少し小さい美人はイチノの肩らへんからひょっこり顔を覗かせてこちらの様子を伺っている。...グッ、可愛いな...

「なんや自分チームメイトかいな?貧弱な見た目やな」
「うちのマネージャーに何か用ですか?」
「いいや可愛いな思ってな、声かけとったんや」
「...用がないなら失礼します」

岸本のいびりにも反応を見せず堂々としている丸坊主はそう言い切ると美人を連れて立ち去ろうとしたがそこに立ちはだかったのがこんのチョンマゲ岸本やわ。あーしつこい男は最悪やで誰か教えてやってや...

「待てやお前どこの高校や?当たったらぶっ潰してやるからな」

さっさと立ち去られそうになり岸本の機嫌は最悪やった。なんや口の悪い奴...

「今時坊主なんて変なチームやな流行らんで?しっかし弱そうやわ」
『イチノ、行こう?』
「待てや姉ちゃんどこの高校かだけでも教えろや」

もしかして山王の真似しとるんか?王者やもんな近付きたいのはわかるけどな、坊主真似したって実力差は埋まらんやろそんな貧弱な見た目して...とかなんとか岸本が早口でまくし立てた瞬間、後ろからぬっと大きな影が現れたわけや。あれ...?

「イチノ、なまえ、さっさと来いみんな待ってるだろ」
『あぁ河田!ごめんでもこの人たちが...』
「...なんや山王の河田やんか!」

確かに山王の河田や。間違いあらへん。後ろには深津と1年のエース沢北もおるで...え?なんで?なんでなん?坊主...ってもしやこのイチノも山王?!え?山王のマネージャーか?!?

「うちの一之倉とマネージャーに何か用か?」
「...ハァ?!うちの...?!」
「ちなみに豊玉?って大阪か?兵庫か?」
「...あぁ昨日相手のエース退場させたとこっすよ」
「あぁあの品のないチームか。で?山王に何の用だ?」

1年の沢北の言葉にそう返してきた河田。岸本は目を見開いて驚愕している。

「...姉ちゃん、山王のマネージャーかいな...!」
『人を見た目で判断するなんて最低です』
「なっ...?!」
『イチノは貴方達なんかよりずっとバスケも上手くて中身もいい男です』

そう言い捨てるとイチノを引っ張って先に去っていった美人。残った河田たちにフッと鼻で笑われた。なんや...なんやったんや今のは...

「...岸本、声かける相手間違えたみたいやな」
「南...ほんまや...」

衝撃でしばらくその場から動けない俺らやった。








イチノになりたいと思ってしまった俺は一体...

(...嘘やろあんな美人が山王に...)
(岸本、これは現実や受け入れろ)
(無理や無理や!どないなっとんねん)









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