■ 諸星






『ねぇ待って、血が出てるよ』
「へ?」

高校最後のインターハイ、愛知2位なんて信じられねぇけどまぁそこはもう関係ない。試合会場でフラフラ歩いていれば突然グッと腕を掴まれた。相手を見れば俺の肘あたりを目で追って手当てしないと...と慌てている。

「え...ちょっ、...」

バタバタ持っていた救急箱を開いてあっという間に消毒液を塗られたわけだけどちょっと待てよ、この美人誰なんだよ?!え?!いやいや、ふーふーとかされたんだけど?!嘘だろマジ突然天使が舞い降りてきたわ!

「あ、ありがとう...」
『ごめんね突然、マネージャーだから怪我見ると放って置けなくて』
「あぁ、マネージャーさんね...」

うえぇえ?!こんな美人なマネージャーがいるなんてそんな幸運どこのチームが掴んだわけ?さっきチラッと見たら湘北のマネージャーもなかなかの美人だったけどさらに上を行くなぁこの人は...

『愛和の諸星くんでしょう?』
「あぁ、うん」
『かすり傷でも気をつけてね、愛知の星!』

それじゃあね、と言われて俺は咄嗟にその細い腕を掴んでいたわけである。

「あの!」
『...へ?』
「あ、ありがとう、よかったら名前でも...」
『いいよ、絆創膏貼っただけだししかも勝手にね』

お節介で逆にごめんねなんてなぜか謝られて俺はブンブン腕を振ったわけだ。いやいやそんなことない、むしろ嬉しかったし...

「どこの高校?今日試合なのか?」
『ううん今日じゃないよ、あのね、さんの...痛っ』

言い途中で突然彼女はドカッと頭を叩かれて俺は咄嗟に変な声が出た。多分うわぁっ、とか言っちゃったと思う。あまりにも驚いたから仕方ない。なんだよこんな美人の頭叩くなんて最低な野郎だな!!

「こんなとこでナンパされてるピョン」
『違うよ!怪我してたから手当てしたの!』
「お節介なマネージャーが申し訳ないピョン」

ピョンピョン言われて呆気にとられていたわけだが、いや、コイツ...どう見ても深津だよな?山王の深津だよな??え?...え!うそ?!もしかしてこの人が噂の山王の美人マネージャー...

えぇ?!噂には聞いてたけどここまで美人だとは思わなかったぞおい...

「いや、いいけど...山王のマネージャーか?」
『そうだよ、対戦するかもしれないからよろしくね』
「戦うのはなまえじゃないピョン勝手によろしくするなピョン」
『痛いってば深津...』

ただただぼうっと2人を見つめていたら後ろから山王の奴らがゾロゾロやってきてあっという間に俺はイガグリ頭に囲まれた。いや、坊主の連中の中にいると余計にこの美人が映えるな。すげぇや...変な光景。

「あ、愛知の星だ」
「愛知の星がナンパしてる」
「なまえがナンパされてる」
「湘北の小さい奴に似てるな」
「星って英語でスターなのに愛知2位なのか」
「英語にする必要あったか?」
『いやいやみんな、思い思いのこと言い過ぎ』

どこから答えていいかわからないうちになまえ と呼ばれた美人マネージャーがツッコんでくれて俺は思わず苦笑いしてしまった。怖いよお前ら威圧感すごい...

「うちのマネージャーに何か用だったか?」
『河田、私が勝手に怪我見つけて絆創膏貼ったの』
「お前は誰彼構わず手当てするんじゃない」
『だって!バスケ仲間じゃん放って置けないし...』

河田に怒られてシュンとしているその顔すらも本気で可愛い...と思ってたら隣から異様に鋭い視線を感じた。あ、エースの沢北だ。それと隣は...確かディフェンスのなんだか倉だったな。

「手当てしてくれてサンキュ、俺はもう行くよ」
『あぁうん、ごめんね、頑張ってね!』
「敵を応援するなピョン」
『えぇ...うん...』

最後の最後までみんなに怒られて終始シュンとしている彼女に手を振って俺は輪の中を抜けたわけだ。ふむふむ、一言言わせてもらおうか。










本気の本気で羨ましい!!

(マジでいいなぁ、俺も山王に行ってたら...)
(......入れるわけねぇわ)
(それに愛知を裏切るわけには!!)




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