■ 翔陽
「やばいな、レベル高いな...」
「本当に...マジで可愛いよな」
高野と永野がどっか見ながらヒソヒソ話してるから気になって盗み聞きすれば一定の方向を見ながらそんなこと話してた。なんだよお前ら、控えだからって気ぃ抜いてんなよな。
しかし王子と呼ばれても俺だって男だ。マジで可愛いと言われるその相手を見てみたい気持ちは抑えられない。2人と同じ方向を向けば客席に座りながら必死にスコアをつける1人の女がいた。うーん、遠くて見えにくいけど確かに雰囲気可愛い感じはするな。うん。
「何見てんだよ試合に集中しろ、豊玉に勝ったらここの勝者と当たるんだぞ」
「わ、わかってるよ藤真!」
「藤真くらい顔がよければ俺だって声かけんのによ」
永野がブツブツそんなこと言い出してとりあえず一発肩を殴っておいた。全くコイツは何言い出すんだか。
「いいからちゃんと見とけ、控えだからって怠けるな」
「わかったよ」
とりあえず試合を見ることに再び集中出来たわけだが俺は人にそんなこと偉そうに言っておきながら2人が噂していた彼女のことが気になって気になってしょうがなかった。よくよく顔が見えないからこそ気になってしまう。うーん、どんな顔してんだろ...どこかのマネージャーだよな?
(あのTシャツどこかで見たような...)
遠くからだが彼女の着ているTシャツを見ればなんとなく見たことあるようなそんな感じがした。気になった俺はついにトイレに行くと嘘をついてその場を去ったのだ。ゆっくり自然に距離を縮めていく。すると彼女は突然席を立ったのだ。あ、あれ、こっち来るぞ...やべっなんか緊張してきた...
「どこ行くんすかなまえさん」
『あれ、沢北なんでここに?』
「はぐれちゃだめっすよ!行きましょう」
すれ違いざま沢北と呼ばれたその男と目が合いマネージャーであろう彼女を隠すようにしてすれ違ったのである。あれ、顔が見えなかったけど...というか、沢北?あれ、もしかして...山王工業のマネージャーか?!
(えぇ...山王にあんな可愛いマネージャーいたのかよ)
沢北といえば今年入った1年なのに超スタープレイヤーな男だ。沢北のせいでちっとも顔見れなかったし...つまんねぇの。
その後も幾度となくトライするもののなまえと呼ばれるマネージャーの顔はちっとも見ることができなかった。ついになまえの周りにはゾロゾロと山王のメンバーが集まってついに姿形すら見えなくなったわけである。あれ、どこだ?全然わかんねぇ...
不自然にならないようにウロウロしていた俺はとてもじゃないが高野と永野に偉そうに言える立場じゃない。でも気になって気になって仕方ない...最後の望みをかけて隣をすれ違えば輪の中の1人の男にギロッと睨まれた。...沢北だ。
少し距離が出来てからああいう美形で都会に住んでる奴が1番の敵だとかなんとか聞こえてきた。誰が言ったかはわからないけど多分俺を指しての言葉だろう。グッと胸が痛くなった。ちぇっ、結局見れなかったし...
勝ち進めばまだ望みはあるかと思ったけどあいにく俺は関西人の肘鉄をくらって退場となり翔陽は敗れた。あぁ、なんということだ。今年のインターハイには心残りがありすぎる。
まさか近い将来、まだ見ぬ山王マネージャーなまえという女性が俺の奥さんになるなんて、誰も想像しないだろうな。
はじめまして、マイスイートハニー
(いやしっかし遠目でもかなりの美人だったぞ)
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