全力片想い
「乗れ。」
『あ、うん。』
学校へ向かう通学路、いつも決まって後ろから自転車の流川くんがやってくる。眠そうな顔で隣に自転車をつけて、いつもの一言。
「やる。」
『あ、ありがとう…』
お昼休み、必ず私の教室へやってきてなぜかイチゴミルクのパックをくれる。購買に売ってるのをわざわざ買ってきてくれるらしい。お金無くなるからいいのに。添えられるのはいつもの一言。
「見に来い。」
『え、あ、うん……』
放課後、突然スッと現れて腕をとられる。引っ張られて連れていかれる先はバスケ部部室の前。着替えるから待ってろという意味であろう顔をされ流川くんは3分後に練習着に着替えて出てくる。相変わらず主語がない一言。
「好きだ。」
日々の生活所々に織り交ぜてくるこの一言。不意にくるから要注意。なぜこんなに好かれているのか不思議な私はいつも何も言い返せない。
そんな私の日常が大きく変わる出来事があった。
「絶対何か裏があるよー!」
「だよねー、だって流川くんだもんね。」
「選ぶとしたらもっといい女だよね。」
聞き慣れた言葉だから特に気にも留めないのに。それなのに。
「おい。」
「……流川くん!」
スッと現れたのは不機嫌な顔の流川くん。女の子たちが慌て出す中、ズバッと切り捨てるように言い放った。
「俺が勝手に好きなだけ」
「あいつに迷惑かけるな」
「片想い、ほっといてくれ」
珍しくよくしゃべるなぁ、なんて照れ隠しにそんなこと思って。……本当はやっぱり嬉しくて。ずっとずっと受け止めたい気持ちはあったんだけど、あの流川くんと付き合うのはやっぱり気が引けて。
でもやっと、自分の中で決心がついて。
「好きだ」
『…流川くんの彼女になりたいです、よろしくお願いします。』
切れ長の目が大きく見開いて。見たこともないくらいニッコリ笑って。大きなその体に抱きしめられた私はきっと世界一の幸せ者だね。
『待たせてごめんね。』
「……遅ぇ。」
ありったけの愛を君に
(る、流川くんっ!)
(ん?)
(みんな見てるから!)
(カンケーねー、キスしたい)
(ちょっ!…る!るかっ、)