君に似合うのは笑顔
「…また泣いてる。」
『いいの、気にしないで。』
ブランコに座る彼女が目をこすりながらそう言った。決まった公園の決まったブランコ。彼女がここへ来る時は必ず何か悲しいことがあった時。そして必ず涙がついてくる。
「今日はどうしたの?」
『…大丈夫だよ、ありがとう神くん。』
そしてその涙の原因は必ず仙道彰、なまえの彼氏。
「やめちゃえって何回も言ってるんだけどな。」
『やめられないよ、好きだもん。』
「ここまで恋人泣かせる奴の、どこがいいのかな。」
バスケでモヤモヤした時、何かあった時、決まってくる公園がここだった。何回か通ううちに、同じように彼女もまたここへ来ていることを知った。
何度も何度もここで会うようになり、そして彼女が仙道の彼女であること、そして毎回泣く理由がその仙道張本人にあるということを知った。
『別れる方がつらいよ…』
「それって、どうなんだろうね?」
『……へ、?』
「そんな恋愛続けて、誰が幸せになるのかな。」
ついでに自分が、陵南の制服を着た彼女に何かしてあげたいと思い始めていることも知り、それが所謂恋であるということにも気付いた。知らなくてもいいことだったのに。
「幸せ?仙道の彼女で。」
『…わからない。』
「俺が、本当の幸せを教えてあげる。」
ぎゅっと抱きしめても、何度想いを伝えても、彼女が自分のものになることはない。
「なまえ、好きだよ。」
『じ、神くん…!あの…』
「いつまででも待つ。いつまででも好きだから。」
今じゃなくていい。
だからいつか俺のものになってくれないかな。涙なんかより笑顔がずっと似合うってこと、教えてあげるからさ。
願いを込めて抱きしめる
(絶対諦めない)