彼氏 vs 弟
「…いねーから。」
「んなわけねぇよ!家に誘われたんだよ!」
「…バイバイ、野猿。」
「おっ、おい!そこ退けろよ!」
なまえさんに家に来るかと誘われたのは三日前。練習が午前終わりの午後、彼女の家にお邪魔することになった。今回で三回目の所謂、お家デートってやつ。今までの失敗や反省を生かして、俺は今日こそ…なまえさんと…!
と思っていたが、どうやら甘かったらしい。
「…なまえさん!信長です!」
「でかい声で話すな。」
湘北も練習が早終わりなのか、それとも休みなのか。
どっちにしても、普段の生活がバスケットまみれのコイツが家にいるってことは。まぁ簡単に言えば…監視されるってことだよね。ハイハイ。グッバイ、俺の覚悟たち。
『あー、信長くんやっぱり楓に捕まってた!』
「なまえさんっ!」
「…姉ちゃん、いつになったら別れる。」
『まぁたそんなこと言って。』
海南のマドンナとも言われる彼女をゲット出来たのは奇跡だった。押して押して押すに押して、そこまで想ってくれるならと交際に発展した、のはいいものの。
最大の障害はやっぱり弟があの「流川楓」だということであって。
「姉ちゃんの部屋行くわ。」
『あれ、楓も来るの?』
「ちょっ!おい!」
ましてやなまえさん大好きなコイツが俺のことなんか認めるわけもなくて。はじめて家の中でばったり会った時のあの流川の顔。冥土の土産っす。
「ゲームやろ。」
『んー、まぁ、いいよ。ほら、信長くんも座って?』
「野猿は気をつけろ、姉ちゃん。」
『なにが?』
「姉ちゃんに手出すことばっか考えてる。」
「…なっ!おい!流川!」
そもそもコイツがこの場にいることでさえ気に食わないってのに、何を抜かしやがる…!
まぁでも、所詮男はそんなもんなんだけどさ。でもまさか本人の前でそんなこと言わなくても…!こんなこと本人に知られたらこの先ふたりきりになれば永遠に気まずいままな気がするんだけど…どうしてくれんの、ねぇ、手出せねぇよ、出してぇけど、この野郎。
『いいけど。信長くんとなら。』
「……姉ちゃん、頭、大丈夫か。」
ん……?
顔を赤くして俺を見つめるなまえさん。目が合ったその時、俺の何かがぶっ壊れる音がした。
いざ!突き進むのみ!
(好きっす!なまえさん!)
(勝手に姉ちゃんに触るな!)
(邪魔すんじゃねぇ!!)