夢捧げる涙 | ナノ




11



『どこ…』


金色の目のままスゥっと目を細める

彼女の周りにはあの金と銀の蝶がヒラヒラと舞っている

薄くて気味悪く、近寄りたくないと感じるようなあの独特な気配は…どこ

さわさわと風もないのに彼女の髪が揺れる


『分からない…くそっ気配が薄すぎる…』


いくら集中しても気配はモヤモヤしていてとても場所の特定はとてもできそうにない

しばらく粘ってみたが無理だと諦め…金銀の蝶を見上げる

スッと指を伸ばすと大人しく指にとまった


『探しておいで…アイツを』


そう命じると蝶は羽ばたき、やがて姿を消す

ため息をついてパチリと瞬きをすると金の目はいつものこげ茶色に戻る

本当はこのまま探しに行きたいのだが、あいにくと今は千莉たちと遊んでいる最中だ

早く戻らなければ有夏月たちも戻ってきてしまうだろう

これ以上時間を使うわけにはいかない…だから捜索は自分の虫に任せた

他の人たちのは知らないが、自分のこの虫は遠隔操作が可能だ

離れていても蝶が見ているモノは見えるし聞こえる。多少なら戦闘行為だってできる優れモノなのが自慢だ。…いや、誰にも自慢できないが

虫を飛ばした後、裏路地を出て何事もなかったかのように元の雑貨屋の前へと戻る

幸いまだ2人は戻ってきていないようで小さく安堵のため息をつく


「――おい藍羽!」


『あ、おつでーす』


少しだけ待つと割引券を見つけてきたらしい緒里と有夏月が店から出てきたのが見えた


『しっかり見つけてきましたかぁ?』


「うん。色々種類あったからいっぱい取ってきたよ。ホラ」


確かに有夏月が持っている枚数は結構な数でこれは慎重に決めなければならないかもしれない

選択肢は多いほうがいいだろうし、まぁ困ることはないだろう


『じゃぁ千莉と大助くんたちのとこに戻ろぉ?たぶん純も…あ、ほらいたぁ』


タイミングよく純の姿も見つけ、合流して4人で千莉たちのいる場所へと戻って行った

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