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『あ、2人仲直りしてるっぽいねぇ』
大助と千莉が並んで座っている姿を見て安心して呟くて2人のもとに足を進めたとき
「お兄ちゃん…今ごろ、何してるのかなぁ?」
そんな千莉の言葉に、藍羽たちの足がピタリと止まった
「最近、こわい夢ばかり見るの」
「夢?」
千莉はまだ藍羽たちの存在に気づいておらず、大助が千莉の言葉を繰り返す
「みんなが目の前で次々といなくなっちゃう夢……お兄ちゃんと、それに大クンも…」
大助と重なっている手が小さく震えているのが藍羽たちがいる場所からも見え、小さく眉をひそめる
完全に名乗り出るタイミングを失った4人はただ千莉の言葉を聞くしかできない
「声が、聞こえるの。みんながいなくなるのは、私がいるせいだって……私がみんなを消していくんだって…」
普段弱いところを見せるのを厭う千莉が、泣きそうな顔をしている
「私のせいなのかな?私はやっぱり…みんなの邪魔になってるのかな…?」
その言葉からはハッキリと恐怖と不安が伝わってきた
目が見えないこと、体が弱いこと…色々なことが重なり、それが恐怖へとなっている。本当なら笑みを浮かべることだって普通じゃ難しいはずなのだ
だけど千莉は決して必要以上に他人に甘えようとはしない。いや、甘えられないのかもしれない…他人の負担になることを何よりも恐れている千莉だからきっと…
隣にいた緒里が耐えきれないとばかりに口を開きかけたのを藍羽は視線で制す
今ここで私たちが出ていってもまた千莉はいつものように笑ってしまう。今の彼女に必要なことは、きっと大助がやってくれる
その期待通り、大助は握った千莉の手の上に、もう片方の手を重ねて、一言呟いた
「キャン・ユー・フィール?」
「……え?」
「いつか観たろ?千莉が好きだって言ってた映画の真似」
その言葉はきっと、2人にとってはとても大切な言葉なのだろう…千莉は驚いた表情で大助を見ている
「逆だよ。千莉がいるから、頑張れるんだ。圭吾はもちろん、俺だってそうだ」
そこでようやく大助はこちらの存在に気づいたようで、笑みを浮かべて千莉の手を強く握る
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