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突然の藍羽の提案に皆は呆けているが、緒里だけはすばやく反応した
「俺賛成。適当な店で割引券もらってくるわ。藍羽と有夏月もこいよ」
緒里が視線で大助と千莉を指し示すとそれで純と有夏月は理解したようだ。
2人ともクスリと笑うと千莉と大助の傍から離れる
「分かった、行くよ。千莉はここで大助くんと待っててね、すぐ戻ってくるよ」
「じゃあ私は映画、何やってるか見てくる」
『ふふっ。じゃあ大助くん千莉よろしくねぇ』
ここまですれば大助にも皆の意図が分かるだろう
ガンバレ、と手を軽くふると取りあえず各自言ったことを実行すべく純と別れて有夏月と緒里とカラオケの割引券を求めて近くを徘徊する
『大助くんと千莉仲直りできるといいねぇ』
「大丈夫だろ。ここまで俺らがお膳立てしてやったんだ。できなかったらバカだな」
「ははは…あ、ここにならありそうじゃないかな?」
有夏月が指さしたのは小さな雑貨屋で…たぶんここなら探せば割引券ぐらいあるだろう
『よし、2人ともゴー!私はここで後方待機といたしまーす』
「バッカふざけんなよ!何で俺らだけで…!」
『ふふん。千莉のお怒りを鎮めてあげた御恩を忘れたのかしらぁ?お二人さんー?』
「なぁ…それは僕らがお昼ご飯奢ったことでチャラになったんじゃ…!」
『グタグラ言わずにぃ早く行きなさーい!』
グイグイと2人の肩を押して無理やり雑貨屋に押し込んだ
文句が言われているのは口を見ればよく分かるがガラスばりのドアを閉めたから何も聞こえないから問題なし
諦めたのか2人が店の奥に進んでいき、ここから完全に姿が見えなくなったところで……藍羽は浮かべていた緩い笑みを消した
『…』
そしてそこから近い細い裏道にへと入り、人影が見えなくなったところで足を止める
『感じる……あの薄い気配が…』
独特な気配を感じとり、それ故藍羽は1人になりたかったのだ
目を一度閉じ…ゆっくりとまた開く
そこにあるのは、あの金色の瞳だ
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