05
「それは先生に頼まれたから…」
そう、俺が自ら進んで厄介事の塊っぽい立花に話しかけるわけがない。
担任の水瀬に頼まれたから仕方なく、だ。
椎名の上をいくチャラさを誇るホスト教師、水瀬。24歳独身。顔はあまーい顔立ちの美形。親衛隊もどきアリ(教師に親衛隊は問題があったので)。
その見た目とは違い中々俺らのことをしっかり見てくれる先生だから生徒からの信頼も厚い。ヅラとは雲泥の差だ。
たまたま偶然俺の横は空席で、必然的にそこに転入生が入ることになるのはまぁ仕方がないことだ。
そして隣の席になる俺に面倒を見るよう言うのもまぁ当然といえば当然である。
そこで俺が真面目っぷりをアピールせず、我関せず的な態度を取ればよかったのだ。
なのに俺は不覚にも自分から、宜しくなんて言ってしまい…それが友情だと勘違いした立花を前にもう溜息しか出てこない。
「そーそー!しかも朔夜の親友は俺だし。勝手に変なこと言わないでよね」
勝手に変なことを言っているのはお前もだ、椎名。
そして無暗にひっつくな!
内心イライラしながらもそろそろどうやって話を切り上げようかと考えていると、タイミングよく教室のドアが開かれた。
「おーい席つけー。HRだぞー」
今日も十分にホスト教師っぷりを見せながら(ついでに大きく開いた口も見せながら)やる気なさそうに水瀬が入ってきた。
「ほら、先生来たし、席つこ」
非常に嫌だがこれ以上話をこじらせるほうが面倒だったから立花の背中を無理やり押して席につかす。
何の因果か俺と立花は隣同士で窓側、椎名と倉持は前後ろで廊下側という非常にメンドくさそうな感じのする配置であった。
見た目を裏切りテキパキとHRを終わらせた水瀬が教室を出た瞬間。
「なぁ朔――」
「ひでぇって朔夜!何で俺を置いて席ついちゃったわけ!?」
同時に2つの声が俺に向けられた。
もっとも最初の立花のは椎名の声でかき消されて何言ったのか全然分んなかったけど。
だから気付かなかった振りして椎名のほうを向いた。
「別に置いてってなんか…先生が来たなら席つかなかんだろ?」
「うわ…超真面目…」
ギリッ
「うっ」
「な、に、か?」
ニッコリと笑いながら足をギリギリと踏んでやると青い顔をして首をブンブンと横に振った。
余計なことを言われればそれ相応の仕返しを受けるとこの鶏頭はまだ覚えないらしい。
きっと3歩歩く前に忘れるんだろうな…可哀想に。
「朔夜!俺もお前呼んだんだぞ!」
「そうだったの?ごめん、聞こえんかった」
……すぅぐ泣きそうな顔すんのやめてくんないかなーウザイから。
なーんて言ったら後ろにいる倉持が殴りかかってくるからパスだな。
真面目くんの回答がいまだによく分らないっての…優しく、角が立たないように、だよな、たぶん。
「…さっき何て言ったかもう一回教えてくれる?立花」
よし、俺的にはパーフェクト!
真面目生活もだいぶ板についてきたみたいでちょっぴり嬉しかったり。
…いや、悲しむべきなのか??
。
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