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「あぶね…っ!」
ガッシャーン
「…いや、マジで危なかったな」
「…あぁ」
目の前にある、壊れた植木鉢を見て俺と椎名はひきつった笑みを浮かべた。
俺のために壊された植木鉢の数はこれで13個目になる。
椎名に押されなければ綺麗に頭の上に落とされていただろうな…
「つーかいい加減にどけ」
「えー?」
俺を押し倒した体勢のまま動こうとしない椎名に超小声で文句を言う。
相変わらず油断するとコイツはすぐベタベタしたがる。
「ど、け」
「はいはい」
それ以上ゴネるとキツイ仕返しをされると分かったのか、大人しく俺の上からどいた。
「ったく…この植木鉢一体いくらすると思ってんだ?アイツら…」
庶民派のDクラスが見たら驚くような値段なのは間違いない。
たまに高価そうなものが落ちてくるから、これは落としていいものなのだろうかとこちらが心配してしまうときもある。
お坊ちゃまには関係ないか。
「最近ほんとハードな生活送ってるよねー俺ら」
「誰かさんのせいで、な」
制服についたゴミを払いながらため息をこぼした。
あの食堂での一件から早1週間。
俺の予感は見事的中し、その翌日から見事に"制裁"の対象にされてしまったのだ。
ロッカーは目も当てられない状態にされ、教科書の中にカッターの刃が仕込まれ、歩いていると水入りのバケツか植木鉢が落ちてくる
教室では消しゴムのカスがびゅんびゅん飛んできて、廊下に出ればひっかけようと足が出てくる。
いつでもどこでもグチグチわけ分らんことを言われ、歩くたんびき憎悪の目で見られる
正直言って、よく1週間もキレずにすんだなと自分で関心してしまうほどのストレスだった。
「あ、避けたよあの根暗!」
「でも八城様にかからなくてよかったよ本当に!」
「キーッ根暗のくせに!!」
根暗根暗言うんじゃねーよ。
俺の名前がネクラだと思われるじゃねぇか。俺の名前は香月朔夜だっつーの!
香月財閥の力なめんじゃねーぞ?俺が本気で親に泣きついたらお前ら全員経済界を追われるんだぞ?
俺頭いいからこうやってグチグチ言ってるお前らの顔と名前一致できるからな?
キレそうになる自分を抑えるために下を向いて耐えていると、それが泣いていると勘違いしたのか周りにいた観客共は喜びの声をあげる。
もう一度言う。
俺が本気でその気になったら、お前らの退学はもちろん家だってブッ潰してやることだってできるんだからな!
。
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