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18



「ありがとな、朔夜!」


会長たちと離れて少したったあと、立花はにかっと笑いながら礼を言ってきた。
何度も言うが、口元しかろくに見えない状態でにかっと笑ってもホラーみたいになるだけだぞ。


「何が?」

「俺をアイツらから助けてくれただろ!?」

「あぁ…そのこと」


しかしそれは立花のためなんかでは全くない
これ以上注目されたくないからに他ならず、強いていうなら自分のため。
でもここで礼を言ってきたってことはコイツの中で俺とのユージョーはとても深まったはず(あくまでコイツの中でのみ)。
なんかますますウザくなりそうな予感もするが…


「別に立花のためってわけじゃないからいいよ、気にしないで」


そして俺の存在にも気にしないでください。切実に。


「そんなことないって!お前本当にいい奴だよな!」


そーですよねー。お前の俺の思いが届くわけがないですよねー。
分かっていたが、やはりイライラする。


「はい、教室とーちゃく」


いつもより若干早歩きで歩いていた椎名が勢いよくドアを開けた。
お前は立花から離れた席だからいいが、俺は近いんだからな!
意気揚々と自分の席についた椎名を見て軽く殺意がわいた。


「なぁ朔夜、次授業何だっけ?」

「…現文、だね」


時間割見ろよ!と思いつつも律儀に答える俺
教室内は食堂に行く前と行ってきた今ではやはり空気が違う。
言い忘れていたが、俺のクラスは2-Bである
単純に説明すれば、家柄はいいが頭はフツーな生徒の居場所だな。
Aが頭も家柄もいい奴ら。
Cは頭も家柄もフツー。
Dは頭いいけど一般家庭の奴らなど。
Eは…その他、だな。頭も家もフツーかそれ以下の奴らの巣窟。
俺としてはCがよかったのだが、家が財閥のせいでBになってしまったのだ。


「現文かー…なんか寝ちゃいそうだな!」


そしてそれぞれのクラスに特徴があるのも忘れてはいけない。
Aはエリート路線まっしぐらのお坊ちゃま集団で、生徒会や風紀委員など人気の高い奴らが一番いるクラス。
Bはエリート路線から少し外れてしまったお坊ちゃま集団で、それ故か…親衛隊の偉い奴らが一番いるクラス。
Cは…なんつーか、親衛隊に所属している奴らが多いな、とにかく。
Dは中立地帯だな。一般家庭からの特待生などが多く、親衛隊の数もそう多くない。
Eはまさに不良の巣窟。そこだけ異様に治安が悪いんだよなー。

つまり、つまりだ。
俺のいるこのBクラスは、親衛隊の奴らの本部みたいな感じで…
分かる?このビシバシと突き刺さる悪意と殺意にまみれた視線を!
幸せなことに立花は全くと言っていいほど気づいてないみたいだがな!

眠いとか何とかグダグダ言っている立花に愛想笑いを返し、席について見えないように大きなため息をつく。
疲れた…ひじょーに疲れた。
現文の教師と同じ時に倉持も入ってきたのを見て、面倒くさそうに教科書を開いた。



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