ありのままに、 | ナノ




20



「大丈夫か?朔夜」

「あぁ…大丈夫、だから」


人の目がある時は"真面目な根暗"だから、その演技をしなくてはならない。
文句を言いたいのにグッと堪え、無理やり作ったせいで平坦になり過ぎた声で返事をする
それに少し心配そうな表情をした椎名だったが、これ以上つっこむことなく大人しく引き下がってくれた。
普段立花と同じぐらいバカなヤツだが、こういうとき空気読めるのが椎名で無理やりつっこんでくるのが立花だろう。


「俺、別にこんなのに負ける程弱くないし」

「だよなー!俺も頑張るから朔夜も頑張ってねん」

「はいはい」


いつもの椎名の軽口をかるーく聞き流し、止まっていた足を前に動かす。
1日の始まりに植木鉢の落下を見せられ、若干のテンションの低下はやはり否めない。
頑張る気がうせ、逆に寮に戻りたくなった。
朝からみんな暇なんだな。羨ましい限りだ。


「……」

「うっわー…」


そして俺のロッカーは異臭を放っており、近寄るのも遠慮したくなるほど悲惨な状態だった。
ロッカーにはカギをかけていたはずなんだが…そばには壊されたカギが転がっており、ドアはあけられてないというのにこんなにも異臭がするのだ。
開けたら…それはもう恐ろしいものたちがつまっていることが容易に想像できる。
開けられるとわかっていても簡単にやられたらムカつくから毎日律儀に新しい鍵をかけてやっている。


「こうもやってくれると逆に何か清々しくねぇ?」

「ねぇな。ほら、早くロッカー開けて」


そんな異臭を放つ俺のロッカーを素通りし、椎名のロッカーから自分の私物を取り出す
やられると分かっていてロッカーに物をしまうバカはいないだろってハナシだ。
俺のロッカーは夕方帰る頃までには綺麗になってるから放置してても問題ない。
誰がやってるかって?興味ないから知らないが、たぶん風紀委員だろう。
校内の風紀を守るために毎日せっせと俺のロッカーを綺麗にするなんてなー。俺だったら絶対に死んでもやりたくねェ。


「八城様のロッカーに私物を入れるなんて…!」

「根暗のくせにーっ!!」


俺が全くへこたれないのがムカつくのか周りの奴らは悔しそうにしている。
つーか椎名の親衛隊は全く動いてないのになんで他の奴らが好き勝手やってんだよ、ってハナシ。
むしろゆーちゃんたちは俺を守ろうと水面下で頑張ってくれてんのにさ。
何でもかんでも立花に対する欝憤を俺にぶつけるなっつーの。
んでもってその欝憤の理由に椎名を使うなよな。


「また新しいカギつけないとな」

「今度はどんなカギにしたんだ?今日つけてたのは確か高級品だったよな?」

「1個1万円の超高級品、だ。明日は100円の安物」

「…いったいどこでそんなの手に入れてくるんだ?」


他愛のない話をしながら教室に向かっていく
途中何どか足をひっかけられそうになったが軽くかわし、数多くの舌打ちを聞きながら、だが。
やはり椎名がいると手を出しにくいらしく、悔しそうにこちらを見ているだけの奴らが大多数だった。
ま、番犬がわりにはなるってことだな。
だけど教室に辿りつくまで、という言葉が続くんだがな…これが。



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