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「どーせなら俺らのところに来いよ。いい場所知ってるからさ」
『え、でも私友達が…』
「いーって!ほら!」
『え、ちょっ…!?』
いきなり横抱きに抱えられ(世間一般的にそれはお姫様だっこと呼ぶ)、問答無用とばかりに連れ去られた
いつもみたいに自分で飛ぶのとでは快適度が全く違い、人に抱えられてる状況は不安定で非常に怖い
無意識のうちに鵺の服を掴んでしまっている朱音を、鵺は気づかれないように観察する
庇護欲をくすぐられるというか……どちらかと言えば地味な格好をしている彼女に、そんなことを一瞬でも抱いたことに鵺は驚く
―――コイツ、一体何者なんだ…?
極普通の少女のはずなのに、どこか違和感を抱いてしまう
……ひどく、好奇心をくすぐられる
『ぬ、鵺まだ…!?』
興味を抱く人間は今までにだっていたし、小鳥丸だってそうだ
だけど、彼女に抱くのとは少し、だけどハッキリ違うモノだということは理解できた
今まで何にも囚われることなく生きてきたというのに―――
「あと少しだから我慢しろって」
―――この感情の名を、俺は知らない
鵺は言葉通り、あの後すぐに目的地に降り立った
ちょうどスクリーンが真正面から見え、確かに隠れスポット的な"いい場所"だった
今そのスクリーンにはほぼ裸のゴーゴン・シェルのドアップと、その後ろでのたうち回っているオニギリの姿が映っている
もしオニギリが負ければ、カズとブッチャの黒星と合わせてストレート負けということになる
『大丈夫かな……』
小さく呟いた朱音だったが、とある大事なことを忘れているのには全く気付かない
呑気に心配なんてしてる場合ではない―――何故、鵺に見つかった時に迷子になっていた?
「その戦待ってください!!」
『えっ!?………えぇっ!!?』
大きな声と共に現れたのは、確かに探していたリンゴだった
が、"クロワッサン仮面"ではなかった
…というか、服を着ていない
ヒモで本当に大事なところだけ辛うじて隠している状態で胸もお尻もマル見えな彼女を見て、大きなため息をこぼした
『うーん……アタマ痛い…』
。
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