Fly! | ナノ




18





『、初めてだと思うけど…』


少なくともこの姿では初めてだから間違ってはない


「そうか?どっかで見たような気がすんだけどな……」


ブツブツと呟いたかと思えば、あっさりと考えることを止めたようだ


「まぁいっか。悪ィな、変なこと聞いて。俺は鵺ってんだけど、お前は?」


そう言ってぶつかった少年は、無邪気な笑みを浮かべた

まさかここで"金色"ですとは言えるわけがないため、本名を名乗るしかなかった


『私は朱音。ぶつかっちゃってごめんね、鵺くん』


「…鵺でいい。くん付けなんて慣れてないし」


『そう?なら鵺って呼ぶわ…私も好きに呼んでね』


少しだけ笑みを浮かべて真っすぐな視線を向ける朱音に、鵺は僅かに顔を赤くする

この会場にいることに少し違和感を感じるような、どこにでもいる"普通"の少女

少し野暮ったい雰囲気を醸し出してはいるが、その眼鏡の奥に見える瞳は驚くほど透き通っている

――どこかチグハグな女、というのが第一印象だった


【おぉーっと!ゴーゴンの技が白ブタにキまる―!!】


会場が一気に沸き上がったのが肌で感じられる


『オニギリくん!?』


無意識のうちに彼の名前を口にしてしまい、次の瞬間それを後悔する


「オニギリ…?ゴーゴンが相手してるアレか?」


訝しげな表情を浮かべて朱音を見つめる鵺


「知り合いか?」


『あーうん、まぁ……』


「へぇ……」


目線が痛い…


『い、いや…オニギリくんたちの友達だからさ、心配もする…よね?』


無言の催促に耐えきれなくなり、渋々といった様子で白状する

別に隠すようなことではないが…余計なことは言わないにこしたことはない

キラリと鵺の瞳が光るわけがない、きっと見間違えだろう


「じゃあ小鳥丸のサポーターなんか?」


『え、えぇまぁそんなとこかしら…?…あ、そろそろ戻らないと心配されるから帰るわね』


かなりわざとらしいと自分で思いながらも無視してこの場から立ち去ろうとクルリと後ろを向く


『というわけでじゃあ……ね……』


だがガシリと腕を掴まれ、それは叶わなぬ夢となった

……お願いだから帰らせて下サイ



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