17 それは現か幻か
【第4話】
『あれ……リンゴどこ行ったんだろ…』
リンゴを追いかけていたはずなのに、いつのまにか完全に見失っていた
改めて探そうにも、こんなにも多人数の中からじゃまず見つからないだろう
仕方がないとあっさり諦め、絵美理たちがいる自分が元いた場所へ戻ろうと踵をかえした、が
『………んん?』
振り返った先に広がっている光景に首を傾げた
―――どこだ、ここ
完全に迷ってしまったようで、呑気に首を傾げている場合ではないと内心かなり焦る
けっこうココには足を運んでいたから、普通なら迷うことはないのだが……もしかして、これが所謂方向オン……
そこまで考えて首を横に振る
これは違う、久しぶりに来たから少しだけ迷ってしまっただけで、決してそうではないのだ。うん、きっとそうだ
『たぶん、こっちから来たよね私…』
あくまでも自分が方向音痴かもしれないことを認めない朱音
こういう迷子の時はその場から動かないのが鉄板なのだが、どこから来たかも分からない全く根拠のない自信をもって歩き出す
――全くの逆方向に
『………なんでつかないのよ…』
歩き続けて早10分
どれだけ歩いても目的地にたどり着くことができず、少しだけ泣きそうになる
ため息をつきながら、何度目かの曲がり角を曲がった時…
ドンッ
『きゃ…!?』
何か…いや誰かとぶつかり、その反動で朱音は後ろに倒れていく
尻もちをつきそうになるも、その直前に目の前の人に手をひかれたため事なきことを得る
『す、すみませ……ん、』
謝罪の言葉を口にしながら、相手の顔を見て見事に固まってしまう
反射的に自分の頭…正確に言えば髪の毛に触って確かめる
――うん、大丈夫。ちゃんと黒髪のウィッグかぶってるよね
「悪ィな、大丈夫か?」
『あ、はい!全然大丈夫ですから…!』
ですから早く立ち去ってください
そんな朱音の心中とは裏腹に、相手はジッと顔を見ている
「お前……どっかで会ったことあるか……?」
ヤ、ヤバイ……
。
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