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19



「…あーあ、一発じゃ死ななかったんだ」


残念、とつまらなさそうな声で呟く少女

少女の視界には、ちょうど地面に倒れる男と、それを無表情に見つめる女の姿があった

ドサリ、と鈍い音をたてて倒れる一護

それと同時に地面には赤い血だまりがゆっくりと形成されていく

胸から腹にかけて大きく斬られたのだから当然だろう

斬る際飛び散った血液が、亜希の頬や制服についていた


「ホント、バカみたいな生命力」


まだ生きようとする死神を見て嘲笑を浮かべる少女

同時に、ここまでズタボロにされてもなお、斬るために存在する刃を振るおうとしない彼に苛立ちも募る


「だけど…今度こそ終わりだよね、お兄ちゃん」


苛立ちのもとは、完全な操り人形となりつつある彼女によって消し去られる

血だまりのなかでピクリとも動かない死神

もっと強いかと思ったのに――残念だ

死神である彼が本気となったのなら、彼女なんて全く歯がたたなかっただろうに

彼の最大にて唯一の敗因は、"甘さ"を捨てれなかったことだろう

敵である亜希に刃をむけることができなかった――ただ、それだけ


「…さぁお姉ちゃん、さっさとトドメをさしちゃって」


血で濡れた彼女は目に光を通すことなく、ただ機械的に刀をゆっくりと上に掲げていく

どこか刹那的な、この世に存在していないものみたいな危うい"美"を魅せる亜希


「ふふ…っ」


もう何も自分の前に立ちふさがるモノはない

完全なる勝利を少女は微塵も疑っていなかった

邪魔な死神は虫の息、その虫の息すらもうすぐ完全に止まることになる


「ばいばい、黒崎一護」


――前腕を斬り落とされた借りは、きっちり返させてもらったわよ


その首に、刀が振り下ろされる

その光景を満足げに眺めていたミヨは、気づかない










「――――っ、亜希!!!」


一護の首を切り落とす直前で刃はピタリと止まった

ミヨはこの"拒絶され隔離された空間"に他人の声が聞こえることに驚きを隠せない

一護はかすむ目で"入口"を見た


「亜希…よね…?」


そこには、彼女と同じ藍色の髪をした少女と、ススキ色の髪色の少年が驚きの表情で立っていたのだった




拒絶しなきゃれなかった
(全てを排することでしか、保てなかった)


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