20 まだ、負けたわけじゃない
「あの公園…絶対、何かある…」
一度決めたらクロームは早かった
小さく呟いた後、ツカツカと先程出てきたばかりの公園にと戻っていくクローム
その後ろを慌ててついていくのはススキ色の髪の少年――沢田綱吉だった
「クローム!」
「…ボスには、関係…ない」
また引き止められると思ったクロームは顔をそむけ、小さく不満を口にする
だがツナはその言葉に首を横に振った
「違うよ、何かあったらいけないから先走らないでって言いたいだけ」
ツナにはまだ状況が上手く把握できてはいなかったが、それでも女の子一人で危険かもしれない場所に行かせるわけにはいかない
クロームがどれだけ妹を探していたのか、その本気を分かっていたツナは、もうここまで言われたら反対する気にはならなかった
直感に頼るまでもない。クロームという少女を、ツナは信頼しているから――ただ、それだけだ
「亜希ちゃん、"あそこ"にいるの?」
「え…あ、うん…たぶん…」
一見何も問題なんてない、静かな夜の公園
時間を考えれば人っ子一人いないことだって何もおかしくなんてないだろう
「……あの変な格好をした人…どこに、行ったんだと思う…?」
「だよね…」
だが、先程まで確かにいたあの黒い着物を着た男はどこへ消えた?
出入り口は一つしかない、この小さな公園
自分たちとすれ違わずに姿を消せるなんて、とてもじゃないが現実的ではない
「……、」
ゆっくりと、公園に向かって歩くクローム
それに一歩遅れてツナもまた一緒に歩いていく
公園の敷地内に入る直前でピタリと止まって―――小さく、呟く
「亜希……」
ずっと探していた大事な大事な双子の妹の名前
一度強く目を瞑った後―――クロームは、公園へと"足を踏み入れた"
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