09
「えーっと…あれだ、もう遅い時間だし、帰ったほうがいいぞ?」
何も知らない人間にとって今の自分は時代錯誤な黒い着物を着て銃刀法違反しているものを背負っているアブない人間だ
無難に帰るよう悟しながら、一護は心の中で泣いた
「ほらクローム、あの人もあぁ言ってるし…犬と千種も心配してると思うし、帰ろう?」
「………」
少年の言葉に耳を貸すことなく、少女はただキョロキョロと何かを探すように辺りを見渡している
その表情は真剣そのもので、余程何か大切なものを落としてしまったのだろう
「…何を探してるんだ?俺もよかったら探してやるよ」
少女に聞いても何も返事は返ってこないだろうと、困った表情で立ち尽くしている少年に話しかける
だが少年も何も知らないらしく、困惑した表情で首を傾げた
「何かここ、何となくですけど嫌な予感がするんですよね……何か、寒いっていうか……」
自分でもよく分かっていないようで、困ったように笑っている少年
だが代行証が一応反応を示して鳴り響いた場所がこの公園であることから、ここからこの2人を離しておいたほうがいいだろう
「なぁ、探し物なら明日、陽が昇ってからでもいいだろ?今日はもう帰ったほうがいいぞ」
「………」
「………ほ、ほらクローム!この人の言う通り今日の所はもう帰ろう?明日また皆で来て探そうよ」
一護の言葉を完璧に無視した少女に、少年は取り繕うような笑みを浮かべて少女を無理やり公園から連れ出していく
当然少女は抵抗を示すが、そこは何だかんだいって男女の力の差、といったところだろうか
多少苦しそうだが少年は少女をズルズルと連れだしていく
「ボス…!離して…!」
「お願いだから帰ろ…!今日は本当に、嫌な、予感がするんだって……!!」
ズルズルズル…
「今日じゃなきゃ、ダメなの…っ!今日しか…こんなに胸が苦しい、今日しか…!」
「クローム!いいから…!!」
ズルズルズル…
本当に無理やり力づくで少年が少女とともに公園の敷地内から完全に出て行った、その瞬間
「―――!?」
公園を取り囲むように、見えない結界が張り巡らされたのが分かった
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