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06 何もなくなった、拒絶の色

佐藤亜希が、姿を消した

その"話題"はやはり高校内にも流れていた


「ねぇ聞いた?佐藤さんのこと…」


「もちろん。何か2日ぐらい学校来てないよね」


「私のお母さんが見たんだけど…あの子の母親が凄い形相で走ってたのを見たんだって」


「マジで!?何か事件にでも巻き込まれたとか!?」


「アイツ実はけっこう顔綺麗らしいから、変なオジサンに…とか?」


クラスでも色々な話が飛び交っている

誰も詳しいことは知らないというのに、根も葉もないことをまるで事実かのように語っていた

その噂話は当然、一護の耳にも入っていた


「(佐藤…)」


心の内に思い浮かんだのはいつもどこか影のある笑みを浮かべていた彼女だ

真面目な性格の彼女が1日だって両親に連絡もなしに帰宅しないだなんてあり得ない

事件等に巻き込まれた可能性が一番高いのだが……


「――ん、黒崎くん!」


「ん?あぁ、悪ぃ。どうかしたんか?井上」


名前を呼ばれ、顔をあげると織姫がすぐ近くに立っていた


「え…うぅん!何だかボーっとしてるみたいだったから…何かあったのかなーって思って!」


一瞬悲しげな表情を浮かべた気がするが、すぐにいつもの笑顔を浮かべていた織姫を見て気のせいだと考えることを止める


「もしかして…亜希ちゃんのこと…?」


「……まぁ、急に姿消したっていうしな…」


否定することでもないと、少し迷った後肯定する一護


「………私のせい、なのかな…」


「…井上?」


小さく呟いた声が聞き取れず、一護が問い返すも織姫はもう一度繰り返すことはなかった


「うぅん、何でもない!早く見つかるといいね、亜希ちゃん」


「あぁ…」


織姫の気持ちに気づかず、ただ一護は小さく呟いた

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