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05


織姫の言っていた"あの人"は黒崎くんだったんだ、と頭が状況をようやく分析し始めたのは織姫が飛び出してから10分程経過した後だった


『トモダチになるんじゃなかった、か……』


思った以上のその言葉はキツかった

少なくともこうなる前までは、織姫とは友達だったと思っていたから……その感情も一方通行だったのだろうか?

いや…もう今となっては例え友情があったとしても、それは今は消滅してしまっているはずだ


『頭いた……』


織姫は、黒崎くんが好きで…だけどその黒崎くんは私ばかり見てて…

たった一言でも相談してくれたら、私は織姫の恋の応援を喜んでしてたのに……いや、きっと言うことはプライドが許さなかったのだろう

もう私の周りに"友達"は誰もいない。こんなにあっという間に人は変わってしまうのだといい教訓になった


『つかれたな……』


無意識のうちに言葉が零れる

毎日毎日毎日毎日…私って何で生きてるのだろう?

両親の敷いたレールから外れないように必死に頑張り、独りで生きて……そこから、何が得られるのだろうか

点数という数字で私の全てが決められ、その数字によって両親の圧力も変わってくる


――私はダレのために呼吸をしているの??





「…可哀想なお姉ちゃん。ずっと独りで頑張ってきたんだね」


ふいに、誰もいないはずの空間から声がかけられた

ゆっくりとした動作で振り向くと、そこには亜麻色の髪の少女がこちらを見ていた

真っ白な服を着た、明らかにこの学校の生徒ではない少女は可哀想、ともう一度呟く


「だぁれにも分かってもらえず、ずーっと一人で頑張って……何でそんなにも頑張るの?お姉ちゃんがどんなに頑張ったって周りの人たちは気にしてないんだよ?」


真っ青な瞳に、私の姿が映っているのをただボンヤリと見つめる

この少女…どこかで会ったことあるような……?


「私なら、お姉ちゃんを理解(わか)ってあげられる。お姉ちゃんを一人になんかしない。私だけが…お姉ちゃんの味方でいてあげる」


少女の言葉だけが、頭の中を支配する


「ねぇ…お姉ちゃん」


差し伸べれた小さな手


「私と、一緒に行こう?"本当"のお姉ちゃんを…私が引き出してあげるから…」


――その手を、私は拒むことができない










この日を境に、亜希が家に帰ることはなかった










差し伸べられたりの優しさ
(それを判断する理性は、残っていない)

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